合理的配慮の申出はカスハラではない|障害のある顧客への正しい対応

法令状況(記事基準日:2026年8月29日):改正労働施策総合推進法による事業主のカスタマーハラスメント対策義務は、2025年6月11日に公布され、2026年10月1日に施行されます。記事基準日には全国法は施行前です。2026年10月1日以後に読む場合、全国の措置義務は施行済みです。一方、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例など、記事基準日にすでに施行されている自治体条例もあります。

対象読者:障害のある顧客・利用者へ対応する店舗、医療、福祉、公共サービス担当者
テーマ:判断基準

障害のある顧客が、筆談、移動支援、情報保障、手続方法の変更などを求めること自体を、要求が特別だという理由でカスハラ扱いしてはいけません。厚生労働省指針は、差別の解消や社会的障壁の除去を求める言動そのものはカスハラに当たらないと示しています。

合理的配慮として何を提供するかは、本人の必要性、事業内容、実現可能性、負担の程度などを対話によって検討します。一方、申出に伴って暴力や脅迫など別の言動があれば、その手段は三要件に照らして評価できます。配慮の要否と行為の態様を混同しないことが大切です。

申出の背景と必要な支援を確認する

本人がどの場面で困っており、どのような方法なら利用できるかを聞きます。障害名や診断の詳細だけを求めるのではなく、移動、視覚、聴覚、認知、コミュニケーションなど具体的な障壁と希望する方法を確認します。

希望された方法をそのまま実施できない場合は、理由を説明し、筆談、読み上げ、予約時間の調整、付き添いとの連携、別の設備など代替案を一緒に検討します。最初の希望が難しいことだけをもって、要求が不当だと決めません。

  • 本人が直面する具体的な障壁を聞く
  • 希望する方法と目的を確認する
  • 難しい場合は理由と代替案を対話する

配慮の申出と不適切な態様を分ける

手話通訳や段差解消を求めたこと、差別的な扱いの是正を求めたこと自体は、カスハラの根拠にしません。企業側が要求内容を理解できなかったり、通常と異なる対応が必要だったりしても、それだけで社会通念上の許容範囲を超えたとはいえません。

ただし、具体的な暴力、脅迫、長時間の拘束などがあれば、合理的配慮の申出とは別に手段・態様を確認します。障害特性や意思疎通上の事情も踏まえて総合判断し、安全確保をしながら必要な配慮の検討経路は残します。

  • 合理的配慮を求めた事実をカスハラ認定に使わない
  • 要求内容と具体的な手段・態様を分ける
  • 障害特性と意思疎通の事情を考慮する

現場が相談できる支援体制を作る

現場担当者だけで配慮の可否やカスハラ該当性を判断させず、障害者対応の責任者、管理職、相談窓口へつなぐ手順を設けます。配慮の選択肢を事前に整理し、設備や筆談用具など日常的に使えるものを準備します。

事案記録では、顧客の障害情報を必要以上に共有しません。必要な配慮、実施した対応、難しかった理由、具体的な言動を分けて記録します。研修では、配慮要求そのものを迷惑行為と誤認しないことと、職員の安全確保の両方を扱います。

  • 合理的配慮の社内相談先を決める
  • 現場で選べる代替手段を準備する
  • 障害情報の共有を必要な範囲に限定する

実務例:聴覚障害のある顧客からの申出

聴覚障害のある顧客が、電話だけでなくメールで解約手続をしたいと求めたとします。通常手順と異なることだけでカスハラとは扱わず、本人が情報を受け取れる方法を確認します。本人確認上メールだけでは難しい場合は、チャット、書面、来店時の筆談など代替案を示します。やり取りの途中で強い表現があっても、まず意思疎通の事情を確認します。もし脅迫等があればその態様を別に評価し、手続の支援経路は残します。

実務チェックリスト

  • 合理的配慮の申出自体をカスハラ扱いしていない
  • 具体的な障壁と本人の希望を確認した
  • 実施困難な場合に代替案を検討した
  • 障害情報と問題となる言動を分けて記録した

よくある質問

通常ルールにない対応を繰り返し求められたら、カスハラになりますか?

通常ルールにないという理由だけでは決まりません。障害による社会的障壁を除くための合理的配慮の申出自体はカスハラではなく、必要性と実施方法を対話で検討します。実施が難しければ理由と代替案を示します。暴力や脅迫など別の言動があれば、その態様を個別に評価します。障害特性も判断事情に含めます。

公式資料

本記事は公開日時点の公的資料をもとにした一般的な情報です。個別事案の法的判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家や関係機関へご相談ください。


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