カスハラ対策の60日計画|方針・窓口・マニュアルを試運転する
法令状況(記事基準日:2026年8月29日):改正労働施策総合推進法による事業主のカスタマーハラスメント対策義務は、2025年6月11日に公布され、2026年10月1日に施行されます。記事基準日には全国法は施行前です。2026年10月1日以後に読む場合、全国の措置義務は施行済みです。一方、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例など、記事基準日にすでに施行されている自治体条例もあります。
対象読者:人事・総務・法務担当者、現場責任者、プロジェクト責任者
テーマ:導入計画
30日目までに責任体制と緊急対応を整えたら、次の30日で方針、窓口、マニュアル、記録を一つの流れとして動かします。文書ごとに別担当が作ると、窓口が受けても現場へ戻せないといった断絶が起きます。
60日目の目標は、代表的な事案を使い、相談受付から支援・顧客対応・記録まで試運転できる状態です。本格研修の前に管理職と少数拠点で試し、現場が理解できない表現や不足する権限を修正します。
5〜6週目:方針と判断基準を同時に設計する
経営方針には、正当な意見への誠実な対応、許容しない言動、従業員保護、相談者保護を示します。内部基準では、要求内容、要求態様、継続性、就業環境への影響を確認し、通常苦情、上席対応、組織対応、緊急対応へ分けます。
業種や自治体のルール、労働組合・従業員代表の意見、障害への合理的配慮、消費者の権利を確認します。社外向けの短い方針と、連絡先や判断閾値を含む社内版を分け、内容が矛盾しないよう法務・現場双方でレビューします。
- 経営方針、対象範囲、行為例、相談者保護を一つの案にする
- 通常・上席・組織・緊急の四段階で判断と権限を整理する
- 正当な苦情と合理的配慮を排除しないか現場ケースで確認する
7週目:窓口・記録・支援のサービス水準を決める
窓口の受付時間、匿名相談、緊急経路、初回返信期限、担当者の代行を定めます。相談者へ説明する秘密保持の範囲、会社が共有する場合の条件、不利益取扱い禁止も共通台本にします。
報告書は速報と詳細に分け、証拠の保存先、閲覧権限、保存期間を決めます。人事は休憩・担当交代・勤務配慮・産業保健など暫定支援の選択肢を用意し、最終認定を待たず必要な保護を始められるようにします。
- 相談受付から初回連絡、引継ぎ、進捗連絡の期限を設定する
- 事実、証拠、影響、本人の希望、会社判断を分けて記録する
- 暫定支援の種類、決裁者、期間、見直し方法を一覧にする
8週目:机上演習で文書と現実のずれを直す
店舗の長時間拘束、取引先の暴言、SNSでの個人情報公開など三つ程度のケースを選び、現場、管理職、窓口、人事、法務が時系列で対応します。電話番号やフォームも実際に使い、記録が次部署へ届くか確かめます。
演習では参加者の知識だけでなく、承認待ち、連絡不通、入力重複、権限不足を記録します。重大な欠陥を直してから方針を正式承認し、顧客向け周知案を準備します。90日目までの全社研修へ反映します。
- 複数チャネルと危険度の異なるケースで机上演習する
- 実際の窓口・連絡先・記録フォームを使って引継ぎを確認する
- 発見した欠陥に責任者と期限を付け、修正版を承認する
例:マニュアル上の責任者が休日につかまらない
机上演習で、休日のSNS脅迫を現場が広報責任者へ連絡する設定でしたが、連絡先は社内電話だけで代行者もいませんでした。企業は緊急連絡網に当番責任者と情報セキュリティ担当を追加し、投稿の保存、個人情報の非公開化、従業員への接触防止を並行する手順へ変更しました。文書レビューでは見つからなかった停止点を、実際の時刻と連絡手段を使う演習で発見できました。
実務チェックリスト
- 基本方針と現場の判断・権限基準が矛盾なくつながっている
- 窓口の初回返信・進捗連絡期限と代行体制が決まっている
- 記録・証拠・暫定支援を扱う責任者と保管方法が明確である
- 机上演習で見つかった停止点を直し、正式承認へ進めた
よくある質問
方針は60日目まで非公開にした方がよいですか?
完成版を待つ間も、危険時の安全確保、暫定窓口、相談者保護は先行して周知できます。未確定の顧客措置を断定するのは避けつつ、会社が従業員を守る姿勢と相談先を伝えてください。正式版を公開したら、暫定版との差分、適用日、問い合わせ先を分かるように更新します。
公式資料
- 厚生労働省告示第51号「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
- 厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(2026年4月24日)
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(改正法成立前に作成された実務資料)
本記事は公開日時点の公的資料をもとにした一般的な情報です。個別事案の法的判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家や関係機関へご相談ください。
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