従業員の「ものの見方の偏り」を職場に生かす|人事・管理職のためのコミュニケーションと支援

従業員は、職場で起きる出来事を、それぞれの「ものの見方(認知)」を通して受け止めています。同じ出来事でも、ある人は前向きに受け止め、別の人は強く落ち込むことがあります。この受け止め方が極端に偏ると、ストレスや人間関係のトラブル、こころの不調につながることがあります。本記事では、人事・管理職が知っておきたい「認知(ものの見方)の偏り」のしくみと、職場でのコミュニケーションや支援にどう生かすかを解説します。

なぜ「ものの見方の偏り」を知っておくとよいのか

人は、ある状況に直面すると、自然に・自動的に頭に浮かぶ考えやイメージに沿って行動します。この「とっさの受け止め方」には、その人がこれまでの経験のなかで身につけてきた基本的な考え方の傾向が反映されています。ふだんは、こうした受け止め方によって周囲にうまく適応しながら働いています。

ところが、強いストレスや大きな環境変化、つらい出来事に見舞われたときなどには、誰でも一時的にものの見方が偏ることがあります。この偏りが強くなると、職場での適応がうまくいかなくなり、感じ方や行動に影響が出て、悪循環に陥ってしまうことがあります。人事・管理職がこのしくみを理解しておくと、従業員の言動の背景を「人格の問題」ではなく「一時的な受け止め方の偏り」として捉えやすくなり、冷静で建設的な対応につながります。

職場で見られやすい「ものの見方の偏り」

強いストレスを抱えた従業員には、たとえば次のような受け止め方の偏りが見られることがあります。マネジメントの参考として知っておくと、声かけの手がかりになります。

  • 思い込みで結論を急ぐ:根拠が乏しいのに、「自分は評価されていない」などと決めつけてしまう。
  • 悪い点ばかりに注目する:うまくいった点を見ず、些細な失敗や指摘ばかりに焦点を合わせてしまう。
  • 過大・過小に捉える:小さな失敗を過大に受け止めたり、逆に自分の成果を取るに足らないと考えたりする。
  • 「〜すべき」に縛られる:「完璧にやらなければならない」と過度に考え、自分を追い詰めてしまう。
  • 自分に関係づけすぎる:無関係な出来事まで、「自分のせいだ」と受け止めてしまう。
  • 白か黒かで考える:物事を「成功か失敗か」と極端に分け、中間を認めにくくなる。

こうした偏りは、誰にでも起こりうるものです。本人を責めるのではなく、「別の見方もある」とそっと示すことが、職場でのコミュニケーションを和らげる手がかりになります。

管理職のコミュニケーションに生かす

ものの見方の偏りを職場で「治そう」とするのは、人事・管理職の役割ではありません。あくまで、日々の関わり方やフィードバックの工夫に生かすという姿勢が大切です。具体的には、次のような点を意識するとよいでしょう。

  • 指摘だけでなく、できている点・うまくいっている点も具体的に言葉で伝える
  • 「全部だめ」ではなく、「この部分は良く、ここを改善するとさらに良い」と切り分けて伝える
  • 本人の受け止め方を頭ごなしに否定せず、「そう感じたのですね」と一度受け止めてから、別の見方を一緒に考える
  • 過度な完璧主義で抱え込んでいないか、業務量や進め方を一緒に見直す

こうした関わりは、従業員が「自分でも対処できる」という感覚を取り戻す手助けになり、職場全体のコミュニケーションを健全に保つことにもつながります。ただし、職場の関わりだけで無理に変えようと求めすぎると、かえって本人を追い詰めてしまうこともあります。あくまで本人のペースを尊重する姿勢を忘れないようにしましょう。

専門的な支援が必要なときは窓口へつなぐ

受け止め方の偏りが強く、本人が長く苦しんでいる、業務や生活に支障が出ているといった場合は、職場のコミュニケーションの工夫だけで解決しようとせず、専門的な支援につなぐことが大切です。考え方のクセに働きかけるカウンセリング(認知療法など)は、専門家が本人と一緒に取り組むものであり、管理職が代わりに行うものではありません。

人事・管理職としては、産業医・保健師・社内外の相談窓口など、専門家に相談できる場をあらかじめ整え、その存在を従業員に周知しておくことが重要です。気になる不調が続く従業員には、「無理をせず、一度専門の窓口に相談してみませんか」と、相談しやすい雰囲気をつくりながらつないでいきましょう。

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