「整理する」が心にもたらす効果|従業員の気持ちのリセットを後押しする職場づくり

「断捨離」は、不要な物を減らして生活に調和をもたらそうとする考え方として、広く知られるようになりました。これは身の回りの物だけでなく、心の整理にも通じる考え方です。人事・管理職にとっても、従業員が頭の中や仕事の優先順位を整理し、気持ちをリセットして前を向けるよう後押しする視点は、メンタルヘルスケアのうえで役立ちます。本記事では、「整理する」という行為が心に与える効果と、職場としてその支援にどう生かせるかを整理します。

物を手放せないという心理は、年代を問わず多くの人に見られます。特定の物に強い執着を持ったり、使わない物を「もったいない」と処分できなかったりして、物がたまり続けてしまう。これは仕事においても同じで、抱えるタスクや役割、しがらみが整理されないまま積み重なると、心の余裕が失われていきます。人事・管理職は、従業員が抱え込みすぎていないかに目を向けることが大切です。

「整理する」ことが心にもたらすもの

断捨離という言葉には、それぞれ次のような意味があるとされています。

  • ……入ってくるいらない物を断つ
  • ……ずっと抱えている不要な物を手放す
  • ……物や状況への執着から離れる

これは仕事や心の状態にも置き換えて考えられます。新しく入ってくる過剰な負担を断ち、長く抱え込んできた不要なものを手放し、「こうあらねば」という固定観念から離れる。従業員が業務や役割を整理し、本当に注力すべきことに集中できるよう環境を整えることは、人事・管理職ができる支援のひとつです。

整理は心の状態を映し出す

身の回りを整理したくなるときの心理には、二つの側面があるといわれます。一つは、雑多に混ざった状態から、今必要なもの・大切なものだけを選び取りたいという気持ち。もう一つは、いったんすっきりさせて、新しく取り組みたいことのためのスペースを確保したいという気持ちです。これは心の中の状態を実際の環境に重ねて整えていく行為だといえます。

従業員のデスクや業務の進め方の変化が、心の状態のサインとして表れることもあります。急に整理を始めた、逆にまったく手につかなくなった、といった変化に気づくことは、本人の心の余裕を推し量る手がかりになります。人事・管理職は、こうした小さな変化を見逃さず、必要に応じて声をかけることが早期支援につながります。

ただし、抱え込んだものを手放す行為には相応のエネルギーが必要です。本人が「片づけなければ」と思いながら動けないでいることは珍しくありません。仕事においても、業務やストレスを一人で抱え込んだまま整理できずにいる従業員には、上司や人事が一緒に優先順位を見直し、手放してよい負担を切り分ける支援が有効です。

「新しい画用紙」を用意する後押しを

身の回りや心を整理し終えた人からは、「本当に必要なものだけを選ぶようになった」「新しいことに挑戦する気持ちが出てきた」といった声が聞かれます。これは、抱え込みすぎていたものを手放したことで、前に進む余白が生まれた状態だといえます。

使い古した紙に絵を描くのは気が進まなくても、まっさらな画用紙には「何を描こうか」とわくわくするものです。心を整理して新しい余白をつくることは、未来を描ける画用紙を用意するようなものといえるでしょう。人事・管理職としては、従業員が過剰な負担を整理し、気持ちをリセットして前向きに働けるよう、業務量の調整や相談しやすい風土づくりを通じて後押ししていくことが大切です。