生きるエネルギーの枯渇…重度のうつ病

うつ病は「こころの風邪」とよく例えられますが、重度になると「風邪」という軽い表現では片付けられないものになるとされています。うつ病は「気持ちの問題」や「甘え」「気合いで治る」といったものではなく、適切な治療やサポートが必要な状態です。本記事では、従業員が重度のうつ病とみられる状態に陥ったとき、人事・管理職がどのように気づき、対応し、治療や療養を支えればよいかを解説します。

重度のうつ病でみられる状態とは

うつ病が重度になると、いわゆる「生きるエネルギー」が枯渇したような状態になることがあるとされています。思うように動けなくなり、場合によっては立ち上がることも難しくなることがあります。あらわれ方には個人差がありますが、職場や面談の場面でも、たとえば次のような状態がみられることがあります。

  • 思考が鈍くなり、頭が働きにくい状態になる
  • 言葉が思い浮かばず、自分が何を話しているか分かりにくくなる
  • 目がうつろになり、生気を失ったように見える
  • 食欲が減退する
  • 不眠または過眠になる
  • 寝たきりに近い状態になり、十分に飲食できなくなることもある

こうしたサインに管理職や周囲の同僚が早く気づくことが、重症化を防ぐうえで重要です。「最近、業務の処理速度が極端に落ちた」「会話のやり取りがかみ合わない」「表情に生気がない」「欠勤・遅刻が増えた」といった変化が続く場合は、本人を責めるのではなく、安心して話せる場を設けて状況を聴き、産業医や医療機関への相談につなぐことが望まれます。十分に栄養を摂れず気力が湧かない状態では、入院による治療が検討されることもあるとされています。

高齢従業員では「見分けにくさ」に配慮する

重度のうつ病では、特に高齢の方の場合、一見すると認知症と見分けがつきにくい状態になることがあるとされています。ただし、うつ病の治療によって認知症のような症状が改善する場合があることから、医療機関での適切な診察によって両者を見分けられることがあります。職場で「物忘れが増えた」「判断力が落ちた」といった変化を年齢のせいと決めつけず、専門的な診察につなぐ視点を持つことが、適切な支援への第一歩になります。判断には専門的な診察が必要なため、人事・管理職の側で原因を断定しないよう注意しましょう。

治療・療養段階で職場が特に注意したいこと

重度のうつ病の治療段階では、職場側も注意したい点があるとされています。症状が重い時期は気力そのものが極端に低下しているため、かえって行動を起こしにくい一方で、治療によって気分が少しずつ回復し動けるようになってくる時期には、注意が必要になる場合があると言われています。

休職中・療養中の従業員に対しては、回復段階に応じて連絡の頻度や復職に向けたやり取りの仕方を調整することが大切です。本人が「早く戻らなければ」と焦りを抱えやすい時期でもあるため、職場からの過度なプレッシャーは避け、主治医や産業医の判断を尊重しながら、人の目が行き届く環境で安心して療養を続けられるよう支えることが望まれます。

人事・管理職にできる「受診への橋渡し」

重度のうつ病は、医療機関にかからないとなかなか回復が難しいとされています。一方で、医療機関で適切に治療を続けることで、症状が和らいでいくことも少なくありません。回復の経過には個人差がありますが、ご本人だけでは受診のハードルが高い場合も多いため、周囲のサポートが回復への大きな一歩につながります。

人事・管理職としては、産業医面談の案内、社内外の相談窓口やEAP(従業員支援プログラム)の周知、医療機関の受診を後押しする声かけなど、本人が支援につながりやすい環境を整えることが役割になります。「無理をしなくていい」「相談できる窓口がある」というメッセージを日頃から発信しておくことが、いざというときの早期対応を支えます。