考えが深まっていない職員との対話~どう気づかせるか~

ハラスメントの事例としては、「こんなこともわからないのか」「何年やっているんだ」「こんなの子どもでもわかる」といった言葉が挙げられます。一方で、現実の業務のなかでは、「その考えはちょっと不適切だろう」と感じる場面に出会うこともあるものです。

法人経営者であり、公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタントでもある筆者が、「考えが深まっていない職員との対話」について、現場の視点からお話しします。

この記事は、こんな方におすすめです。

  • 考えが深まっていない部下との対話の仕方を知りたい
  • ハラスメントにならないようにしながら、早く気づいてほしい
  • 短い時間で、考えの方向を前向きに変えてもらいたい

なぜ面接(面談)を行うのか

私が管理する職場では、年度末にかけて職員一人ひとりと面談を行います。私自身もできるだけ多くの面談に同席し、現場の管理職と2名で実施します。この面談には、いくつもの意味があります。

  • 業務評価としての意味
  • 職員の今後のキャリアの見通しを示す意味
  • メンタルヘルス等の問題がないか確認する意味
  • 職場改善につながる考えを吸い上げる意味

日ごろ比較的よく関わっている職員であっても、こうした場での面談には意味があることが多く、私自身も改めて「職場」というものについて考える機会になっています。

「共通理解」をもって聴くには

とはいえ、年齢や性別にかかわらず、「ちょっとその考え方は気になるな」「それは少し筋違いではないかな」と感じる発言をする職員もいるものです。私も心理職の端くれですので、「そりゃおかしいでしょう」とすぐに表情や言葉に出すことはしませんが、「これは困ったな、この話はどう着地させようか」と聞きながら考えることがあります。

「カウンセリングマインド」を学んでいる方にありがちなのが、「聴いたことを否定しないで聴く」ことは知っていても、それと「自分が納得できていないこと」をどう扱うかが折り合っていない、というパターンです。要するに、「がまんして聴き続けている」状態です。

実際の傾聴とは、「自分の価値観を差しはさまずに聴く」ことです。しかし、心の中で納得できていないのに「そうなんですね、わかりますよ」と返すのは、本心ではありません。大切なのは、「なるほど、そう考えているのか」という納得をもって応じることです。相手の話のリズムを崩さないようにしながら、腑に落ちない部分やわからない部分について、さらに聞き込んでいきます。

たとえば、「◯◯と言っていましたが、もう少し聞いてもいいですか」「◯◯について■■と言っていましたが、それはどういう感じですか」といった聞き方です。それを繰り返し、相手の人となりも踏まえたうえで「こういう意味で合っていますか」と返したときに、「そうなんです」と返ってきたら、「なるほど、わかりました」と共感が成立します。こうして「共通理解」が生まれると、話はスムーズに進み、良い雰囲気で話し合うことができます。

Aさんの場合(面談の事例)

つい先日、「これはどうしようかな」というケースがありました。※プライバシーに配慮し、内容を脚色してお話しします。

40代の独身の女性職員で、専門職として10年以上のベテランのAさんとしましょう。今年度の勤務を振り返ってもらっていると、どうも隣の部署の同年代の女性職員Bさんに対して、批判的な言動が多いのです。

「こちらの仕事と向こうの仕事で、向こうのペースにばかり合わせなければならない雰囲気で、私は嫌なんです」。話の要点は、Aさんの業務はBさんの業務の前段階にあたるのですが、Bさんのペースに合わせて仕事をしなければならず、自分のペースも考えてほしい、ということでした。「自分勝手なのではないか」「なぜこちらが合わせないといけないのか」——そのまま聞いていると、こちらまでイライラしてきます。

対処の方法

さて、みなさんなら、なんと声をかけるでしょうか。「話し合ってみたらどうですか」「それは大変ですね、お察しします」「あなたも計画を立ててはいかがですか」——いずれも一案ですが、こうした場合に最も早く前進につながるのは、次のような問いかけです。

「そうだったんですね。もしできたら、『どうなったらいいか』を教えていただけますか」

考えが深まっていない状態というのは、感情が先に立っている状態です。つまり、現状への不満が中心になっているため、「どうなったらその不満が解消されるか」という状況を、本人に具体的にイメージしてもらうことが効果的です。

実際のやり取りでは、Aさんは「仕事に目標があるのはいいと思うんですが、勝手に決めないで、話し合ってほしいんです」と語りました。そこで「なるほど、いいですね。その話し合いをするには、どうしたらいいですか。協力できるところはします」と返すと、「苦手な人なので1対1だと意見を言いにくいです。なにか場を設けてもらえたら」とのこと。「では、各部署から年度初めに2人ずつ出て、仕事のペースを確認できる場をつくりましょうか」と提案すると、「それだと、すごく助かります」と前向きな反応に変わっていきました。

このように、「では、具体的にどんな感じになったらよいと思いますか」という問いは、どんな不満に対しても有効です。さらに、1回だけでなく繰り返していくことで共通認識が育ち、「聴いてもらえた」という実感も高まります。とても有効な面談になりますので、ぜひ使ってみてください。

KIRIHARE所属 臨床心理士

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企業全体で、メンタル不調の予防・早期発見と介入のサイクルを回すことで、従業員がメンタル不調を引き起こした際も、早期回復を実現します。 KIRIHAREが提供するセルフケアコンテンツ一覧

【KIRIHARE Well-beingカウンセリング機能】

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社内にある保健室のような感覚で、いつでも気軽に利用できるカウンセリング機能です。従業員は、カウンセラー資格や相談援助の国家資格を持つ有資格者に、LINEでのチャット形式やZoomで悩み相談ができます。

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プレカウンセリングでは解決できない場合などは、心理専門職の臨床心理士が対応します。チャットとは異なり、長文での相談が可能です。

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心理テストの受検結果やプレカウンセリング等で、メンタル不調の度合いや緊急性が高いと判断された場合は、心理専門職の臨床心理士によるZoomもしくは対面でのカウンセリングを提案します。   KIRIHARE Well-being カウンセリング機能  

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