ADHDの特性を活かす職場づくり|人事・管理職の気づきと配慮

「注意欠如・多動症(ADHD)」は、「不注意・多動性・衝動性」といった特性をもつとされる発達特性です。職場には、こうした特性によって業務に困難を感じている従業員がいることも少なくありません。一方で、人事・管理職が特性を正しく理解し、配置や環境を工夫することで、本人の強みを活かし、戦力として活躍してもらえる場面も多くあります。今回は、ADHDの特性と、職場でどう気づき・配慮し・適性を活かすかという観点から紹介します。

ADHDは「注意欠如・多動症」として広く知られるようになりました。注意が他にそれて一つのことに集中しづらかったり、じっとしているのが苦手だったりする特性があります。以下、代表的な3つの特性と、職場で見られやすいサイン・配慮のポイントをみていきましょう。

不注意

「注意」とは、感覚に意識を向け続けることをいいます。ADHDの特性がある人は物事に注意を向け続けるのが苦手なことがあり、うっかりミス・忘れ物・ダブルブッキングなどが起こりやすい傾向があります。そのため、スケジュール管理でミスをしたり、書類や備品をなくしたりすることが増えがちです。

管理職としては、こうしたミスを本人の「やる気の問題」と決めつけず、特性として理解することが第一歩です。タスクを細かく分けて指示する、チェックリストやリマインダーを活用してもらう、ダブルチェックの仕組みを整えるといった工夫で、ミスを減らし、本人の負担も軽くできます。

多動性

多動性をひとことで言うと「じっとしているのが苦手」という特性です。静かにする・座っている・動かないでいるといった行動が苦痛に感じられることがあります。

こうした特性をふまえると、一日中デスクにじっと向かう業務よりも、比較的自由に動ける業務のほうが力を発揮しやすい場合があります。配置や業務分担を検討する際に、本人の特性に合った役割を意識すると、本人も周囲も働きやすくなります。

衝動性

衝動性は「思いついたままに行動してしまう」特性です。周囲の状況より自分の発言・行動を優先してしまい、誤解を招くこともあります。一方で、こうした決断の早さや行動力は、新規事業の立ち上げやチームを牽引する場面では大きな長所にもなりえます。短所として抑え込むのではなく、活かせる場面を用意するという視点が大切です。

特性を活かせる配置・環境を考える

ADHDは「障害」と訳されることもありますが、一方的に劣っているわけではなく、場面によっては優れた力を発揮できることも少なくありません。従業員が特性によって仕事に困難を抱えている場合、人事・管理職は次のような視点で配置や環境を見直してみるとよいでしょう。

  • 関心をもって取り組める業務を任せる:ADHDの特性の一つに「興味のあることに没頭できる」点があります。本人が関心をもてる専門領域や、集中力が強みになる業務を担ってもらうと、高い成果につながることがあります。
  • 自分のペースで働ける環境を整える:フレックスタイム制や裁量労働制など、ある程度自由に進められる働き方を用意すると、段取りやマルチタスクが苦手でも本人のペースで業務を進めやすくなります。
  • 役割を明確にする:指示や期待する成果をあいまいにせず明確に伝えることで、本人が力を発揮しやすくなり、周囲との認識のずれも防げます。

従業員一人ひとりの志向や特性を理解し、配置や環境を工夫することで、特性を強みとして活かせる場面はきっと見つかります。なお、ADHDかどうかの診断や医学的な対応は医療機関が行うものであり、人事・管理職が判断するものではありません。本人が困りごとを抱えている場合は、産業医や専門の相談窓口につなぎながら、職場としてできる配慮を進めていきましょう。