ハラスメントにならない「従業員教育の考え方」は、まずこれを伝えよう

 

世界では、いまだに「職人」に弟子入りをして仕事を学ぶ、

という制度がたくさん残っています。

けれども、現在の「会社」という組織では、

一般的にイメージするような、徒弟制度的なやり方では、

成り立たなくなってしまいました。

 

法人経営者でもあり、公認心理師、臨床心理士、

キャリアコンサルタントでもある筆者が

ハラスメントにならない「従業員教育の考え方」

についてお話します。

 

◆こちらの記事はこんな方にお勧めです

初任者研修などの実施に苦心している

従業員教育の実施に行き詰っている

技能を身に着けた従業員がやめてしまう

 

戻ってくる離職者

 

記事の連載をはじめた最初のころ

『わたしの職場では、新任者を採用すると、

3年くらいしていったん職場を離れてしまう人がいる。

でも、数年すると、また戻ってくる』

というお話をしたことがあります。

 

これは、いくつか意味があって

ひとつは、新採用者の採用というのは、

いくらインターンなどを実施したとしても、

学生と現場の間にギャップがあるために、『現場を知らない』

という点から、他の職場には違う環境があるのではないか、

という認識から離職してしまうパターンがあること』

 

『そうした、「現場を知らない」状態で、

就職してきた学生などについては、

ちょうど仕事を覚えたあたりで離職してしまうことや、

現時点での職場に対する違和感だけで離職してしまうために、

結局、次の職場でもうまくいかないことが多いこと』

 

『違う職場を見たときに、「やっぱり前の職場が良かった」

と思える離職の仕方をさせておくと、その職員は、違う現場を

知った状態で戻ってくるので、次の離職は起きにくいこと』

 

といったことをお話したのです。

 

従業員教育の意義

 

職員教育は、さまざまな側面がありますが

ドイツの「マイスター制度」に見るような「徒弟制度」は、

日本ではほぼ『職人』といわれる分野にしか残っていません。

 

ですので、会社などで、メンター制度などをつくって、

特定の社員にお世話係のようなことを振り分けたからと言って、

それほど職務遂行や離職防止に役立っていないように

感じられるのは、仕組みそのものがそれほど

時代とマッチしていないためではないかと思います。

 

仮に、そうした制度を導入する場合には

『会社そのもの、社員一人一人が、

それぞれのキャリア形成をどう考えているか』

という根本的な共通認識ができているかを確認しましょう。

 

つまり

『新しい職員が入るから、〇〇さん、

ちょっと教育係お願いしますね』

というだけではなく

『この組織は、ここで働く一人一人の人生について、

どう考えているか』

が、浸透して、初めて従業員教育の意味を成してきます。

 

ですから

「この書類が上がってきたら、ここにハンコをおして、

次の〇〇部の〇〇さんのところにもっていってね」

という『業務内容』のことだけではなく

この職場で、何年仕事をするかわからないれども、

『この職場での仕事を通して、

従業員自身に何を実現してほしいのか』

ということを、共有することです。

 

会社というものは、理念とか、方針とか、

目的をもって存在しています。

これまでは、それがメインの働き方でしたから

「もっとしっかり働け」

「こんなこともできないのか」

といった言葉になっていたものが、

今はハラスメントとなります。

 

これからは、会社にはこれまでと同じ、

理念や方針などがありますが

従業員一人ひとりの人生を踏まえる必要があります。

 

従業員はどんなことをするために、今ここに現れたのか

 

さて、「夜と霧」という作品で有名なフランクルという

精神科医をご存じでしょうか。

ナチスの強制収容所にいれられ、家族をなくすという、

悲惨な経験をしました。

 

「それでも人生にイエスという」

という作品は、その経験を語ったものをまとめた作品です。

 

その中に、こんな一節があります。

 

『人生が、わたしに何を期待していたかを問う』

 

意味が分かるでしょうか。

 

わたしたちは、「大きくなったら〇〇になりたい」

ということを、何回も言わされ

「将来の夢は?」

「家業は継がないの?」

「安定した職についてほしい」

「いい学校に行かないと将来が不安」

などなど、思い返せば、将来に対する心配や不安ばかりを

あおられているとも言えます。

 

また、

「君のためを思って言っている」とか

「そんな生活では困る」とか

これは、すべて「自分自身の価値観」

ベースにしたものの見方です。

 

そうせざるを得ないことも、もちろんありますが

フランクルの言った

「人生が、わたしに何を期待したのかを問う」

ということを時々、思い浮かべててはいかがでしょう。

 

いろんな苦境や、思い通りにならないこと、

自分がイメージしていたのは異なる環境、

これは、みんなそうです。

はたから見て、幸せそうであっても、

本人は不幸のどん底であることもあります。

 

そうした、外的な要因に不平不満を持つのではなく、

こうした状況の中で、

「ここに生を受けている私は、

どんな風に生きることを願われたのだろうか」

ということです。

 

これは、従業員の方にしても同じ事です。

「この人は、現在こういう状況だけれども、

どんなことをするために、今、ここに現れたのだろうか」

 

あるカトリック系の学校の創始者であるシスターが

教育についてこんな風に言っています。

 

『私たちがすることは、

神様がその人に描いた夢を実現すること』

 

さて、みなさんの従業員教育は、

どんな思いのもとに実施されていましたか?

 

KIRIHARE所属 臨床心理士

 

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