事実と異なる報告を繰り返す社員への、人事・管理職の向き合い方

職場で「報告の内容が事実と食い違う」「自分を大きく見せようとして話を盛る」といった社員の言動に、人事や管理職が頭を悩ませる場面は少なくありません。いわゆる「虚言」が業務に影響している場合、単なる注意や叱責だけでは状況が改善しないことがあります。本記事では、人事・管理職が職場でこうした言動にどう気づき、どう向き合い、本人の支援につなげていけばよいかを解説します。なお、本記事は一般的な情報であり、診断や治療を目的とするものではありません。

職場での「虚言」を2つのタイプで捉える

職場で見られる事実と異なる発言は、大きく2つのタイプに分けて考えると、管理職としての対応方針が立てやすくなります。一つは本人が自覚したうえで嘘をついてしまうタイプ、もう一つは本人も嘘をついている自覚がないままついてしまうタイプです。タイプによって有効な関わり方が異なるため、まずはどちらに近いかを見極めることが出発点になります。

自覚的に嘘をついているケースへの関わり方

本人が「どの場面で、どのように事実と違うことを言ったのか」を振り返れる場合、比較的支援がしやすいタイプです。頭ごなしに人格を否定するのではなく、「いつ・どんな状況で起きたのか」を一緒に整理する関わり方が有効です。本人が自分の言動の傾向を客観的に振り返る取り組みは「セルフモニタリング」と呼ばれ、本人が記録を続けることで、事実と異なる発言が出やすい状況のパターンが見えてきます。

面談などで本人と振り返る際、管理職は次の4点を一緒に確認すると整理が進みます。

  • どのような内容を、事実と違って伝えたのか
  • 誰に対して伝えたのか(上司・同僚・取引先など)
  • どのような場面・業務状況で起きたのか
  • どのような流れでそうした発言に至ったのか

傾向が見えてくれば、「ミスを報告すると強く叱責されるのが怖い」「過大な目標を達成したように見せたい」といった背景が浮かび上がることがあります。背景がわかれば、報告しやすい雰囲気づくりや、無理のない目標設定の見直しなど、職場環境側で対応できる工夫が見つかりやすくなります。

自覚なく事実と異なる発言を繰り返すケース

一方、本人にも嘘をついている自覚がない場合は、管理職や周囲だけで向き合うのが難しいことが多く、産業医や臨床心理士・公認心理師など専門家のサポートが助けになります。まずは、本人が自分の言動に気づける環境をつくることが第一歩です。

人は基本的に、自分にとって何らかの利益になる行動を選びやすい傾向があります。事実と異なることを言うことで「叱られずに済んだ」「評価が下がらずに済んだ」といった経験が積み重なり、それが習慣化してしまっているケースは少なくありません。専門家との対話を通じて、本人がどのような場面でそうした発言をしてしまうのかを丁寧に把握していくことで、改善の糸口が見えてきます。

職場として整えておきたい環境

本人を責め立てる前に、管理職が見直したいのは「事実と異なる発言で利益が得られてしまう環境」になっていないかという点です。たとえば、ミスや遅れを正直に報告すると過度に責められる職場では、誰でも事実を取り繕いたくなります。心理的安全性を高め、正直な報告がむしろ評価される文化をつくることが、こうした言動が起きにくい環境づくりにつながります。

面談では、最初から細部まで完璧に振り返らせようとせず、「おおまかに」整理することから始めるのが現実的です。完璧を求めすぎると、振り返りの内容にもまた事実との食い違いが混ざってしまうことがあります。本人が安心して話せる関係を築きながら、少しずつ具体的に振り返れるよう支えていきましょう。

「人より優位に立ちたい」「できない自分を理解してほしい」といった、本人が普段は隠しておきたい思いが背景にあることもあります。そうした思いも含めて本人が自分を理解し、「事実を取り繕うことで得られる利益より、信頼を失う不利益のほうが大きい」と納得できるようになることが、改善への一歩につながります。

こうした変化は、すぐに結果が出るものではなく、時間をかけて続けていくことが大切です。管理職だけで抱え込まず、人事部門や産業保健スタッフ、外部の相談窓口とも連携しながら、組織として本人を支えていく姿勢が求められます。日常生活や業務に明らかな支障が出ている場合は、医療機関や専門家への相談を本人に促すことも検討しましょう。