従業員のうつ病に人事・管理職はどう気づき支えるか
ある日突然、出勤できなくなる。些細なことで涙が止まらなくなる。食事が喉を通らず、体重が大きく減ってしまう。これまで意欲的だった業務に身が入らなくなる——。これらはいずれも、うつ病の症状としてあらわれることがあるといわれています。本記事では、人事・労務担当者や管理職の方に向けて、職場で見られるうつ病の背景と、従業員の不調にどう気づき、どう支えていくかを整理してご紹介します。
職場におけるうつ病の引き金となるストレス
うつ病の背景となるストレスは人それぞれですが、職場が要因となることは少なくありません。とくに、心身ともに追い詰められた状況が長く続くときは注意が必要です。過重労働やそれに伴う睡眠・食事の乱れ、自己肯定感の著しい低下などが重なると、判断力や働く気力が奪われかねません。職場で従業員に影響を与えやすい要因には、次のようなものがあります。
- ハラスメント:パワハラやセクハラといった理不尽な圧力が、心身に大きなダメージを与えます。
- 過重労働:休息を取りにくい長時間労働や、過大な業務量が続くと、回復の余地が失われていきます。
- 役割や環境の急な変化:異動・昇進・配置転換、テレワークへの移行など、環境の変化そのものが負担になることがあります。
- 復職直後:休職から復帰した直後は、本人も周囲も負担を見積もりにくく、再発のリスクが高まりやすい時期です。
一時的な落ち込みと、うつ病の違いを知っておく
短期的な気分の落ち込みは、誰にでも起こります。通常は、時間が経って体力や気力が回復するとともに、心は穏やかな状態へと戻っていきます。ところが、うつ病ではこの回復がみられにくくなり、つらい状態が何週間も続くことがあります。ネガティブな感情が頭を占め、喜怒哀楽を感じにくくなることもあります。「死にたい」という気持ち(希死念慮)が強まることもあり、決して軽視できません。管理職や人事が従業員のこうしたサインに気づいたときは、ためらわずに産業医や専門の相談窓口へつなぐことが大切です。
人事・管理職が気づきたい職場でのサイン
うつ病は外から見えにくいため、日ごろの「いつものその人」との違いに気づくことが、早期発見の手がかりになります。職場で表れやすいサインには、次のようなものがあります。
- 遅刻・早退・欠勤が増える、または出勤前になると体調を崩しやすくなる
- 口数や表情が乏しくなり、人付き合いを避けるようになる
- これまで問題のなかった業務でミスや能率の低下が目立つ
- 「眠れない」「食欲がない」など、体調面の不調を口にすることが増える
無理をさせず、休める環境を整えることが回復の第一歩
うつ病の回復には、十分な休息が欠かせないとされています。治療は医師の診断のもとで進められるものであり、職場の役割は、本人が安心して休み、治療に専念できる環境を整えることにあります。業務量の調整や配置の見直し、休職・復職に関する制度の段階的な説明などを通じて、本人が焦らずに療養できるよう支えましょう。本人の自己判断に委ねず、つらさが続いている場合は医療機関への受診を勧めることも大切です。
「気づける職場」をつくることが何よりの予防に
「心の風邪」ともいわれるうつ病は、誰もが発症しうる身近な病です。心の状態は身体の怪我や病気と違って目に見えにくく、周囲からも気づかれにくいもの。だからこそ、管理職や人事が日ごろから従業員の様子を気にかけ、「無理をしていないか」と声をかけられる関係づくりが大切です。
うつ病は再発することもあるといわれており、復職後も無理のないペースで働けるよう配慮することが望まれます。相談しやすい雰囲気づくりや、産業医・相談窓口へつなぐ仕組みを整えておくことが、従業員の健康と職場の安定の双方を守ることにつながります。心身が健やかであってこそ、従業員一人ひとりが力を発揮できる職場になるのです。
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