【メンタルヘルス対策】法律や厚生労働省の4つのケアなどを解説

法律でメンタルヘルス対策が義務づけられていることや、厚生労働省が推奨するメンタルヘルス対策があることをご存じでしょうか。

労働者が50人以上いる事業所には、年1回のストレスチェック実施が義務づけられています(労働安全衛生法)。実施を怠ると罰金が課されることもあります。また、企業全体の生産性を高めるうえでも、メンタルヘルス対策は欠かせません。

メンタルヘルス対策とは?

近年、メンタルヘルスに関する問題が深刻化しています。体の不調と同じように、心にも不調は起こります。大きな問題に発展する前に、しっかりとメンタルヘルスの知識を身につけましょう。

そもそもメンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは、心の健康状態を意味します。気持ちが軽い・穏やか・やる気がわくといった状態であれば、心の健康は良好です。一方で、気持ちが沈み落ち込んだ状態が長く続くのであれば、メンタルヘルスの不調(メンタルヘルス不全)といえます。

メンタルヘルスの不調は、周囲に気づかれにくく、自分からも伝えづらいという問題があります。オープンにできないことで、回復に時間がかかってしまうケースもあります。また、不調に陥るとストレスで仕事の生産性が落ちるなどの悪影響が出ます。最悪の場合、職場に行けなくなる可能性もあるため、企業にとってメンタルヘルス対策は必須です。誰にでも起こりうる問題に対して、しっかりとした対応をすることが、現代の企業に求められています。

メンタルヘルス対策の目的

メンタルヘルス対策の目的は、おもに次の3つです。

  • 安全配慮義務の履行
  • メンタルヘルスの不調に陥った社員の職場適応
  • すべての社員の心の健康レベルの向上

中でも特に注目すべきは「すべての社員の心の健康レベルの向上」です。発症や悪化を防ぐだけでなく、全体的な心の健康レベルを高めることが重要です。社員一人ひとりが向上心をもち、良好な心の状態で働けることが、メンタルヘルス対策の最終的な目的といえます。

厚生労働省が定義するメンタルヘルス対策

厚生労働省は、メンタルヘルス対策を大きく3つの段階に分けて定義しています。

  • 一次予防(未然防止)
  • 二次予防(早期発見)
  • 三次予防(復帰支援)

近年は、抗うつ剤が効きにくく長期化しやすいタイプのうつ病の増加が指摘されており、双極性障害や統合失調症、睡眠障害なども含め、幅広いメンタルヘルス対策が求められています。また、こうした不調を抱える人がどのように職場に適応するかも、対策の一つとされています。

一次予防(未然防止)

一次予防とは、まだメンタルヘルスの問題を発症していない人に向けた対策です。積極的に健康の保持増進を行い、問題を未然に防ぎます。具体的な方法の一つがストレスチェック制度の導入です。ストレスチェックの質問票に従業員が回答し、高ストレスと判断された場合は産業医の面接指導が受けられます。あわせて、ストレスのパターンや対処法を学ぶストレスマネジメント研修も一次予防の一つです。

ストレスチェック制度の実施は法律で定められている

ストレスチェック制度は、労働者が50人以上いる事業所に年1回の実施が労働安全衛生法で義務づけられています。実施する際は、すべての労働者を対象としなければなりません。また、実施するだけでなく労働基準監督署への実施報告も義務づけられており、未実施または報告を怠った場合は最大50万円の罰金が課せられることがあるため注意が必要です。さらに、未実施は安全配慮義務違反となり、損害賠償が請求される可能性もあります。

二次予防(早期発見)

二次予防とは、メンタルヘルスの不調を感じ始めた社員に向けた対策です。不調を早期発見できる環境を整え、適切な治療へとつなげます。おもな方法は相談窓口の設置や産業医との面談などです。社員が自ら相談できる体制を整え、相談窓口や産業医面談がすぐに行えるよう、組織全体で周知しておく必要があります。

三次予防(復帰支援)

三次予防とは、メンタルヘルスの問題で働くことが難しくなった社員に向けた対策です。職場復帰支援や復帰後のフォローを行います。この段階で進めておくべきことは、休職の制度やルールの明確化です。明確にしておくことで、職場復帰がスムーズになります。また、再発も考慮し、医療機関との連携体制も整えておくとよいでしょう。

メンタルヘルス対策の4つのケア

メンタルヘルス対策において、厚生労働省は4つのケアを推奨しています。

  • セルフケア(個人での対応)
  • ラインによるケア(管理監督者から部下への対応)
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

セルフケア(個人での対応)

セルフケアとは、メンタルヘルスの不調に個人で対応できるよう、企業が労働者に教育することです。おもに教育研修や情報提供を行います。教育する内容は、ストレスやメンタルヘルスへの正しい理解、ストレスチェックなどを活用したストレスへの気づき、ストレスへの対処などです。部下だけでなく管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、役職に関係なくすべての労働者を対象に行うことが求められます。

ラインによるケア(管理監督者から部下への対応)

ラインによるケアとは、管理監督者が部下に対して行うケアです。職場環境の把握と改善、社員からの相談対応、職場復帰における支援などを行います。管理監督者が職場のストレス要因を把握することで労働環境を改善し、日々の業務の中で部下がストレスを抱えていないか気にかけ、職場環境のストレスを軽減することが重要です。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

社内の産業医・衛生管理者・保健師などが中心となって、セルフケアやラインによるケアを支えるものです。具体的なメンタルヘルスケアの企画立案、個人の健康情報の取り扱い、事業場外資源との窓口、職場復帰支援などを行います。制度や体制を整備し、セルフケアやラインによるケアが円滑に行われるようサポートします。

事業場外資源によるケア

メンタルヘルスを専門とする社外のサービスを利用するケアです。社員が外部サービスに相談するだけでなく、管理監督者などに専門的な知識を提供することも含まれます。メンタルヘルスの不調は非常にセンシティブな問題であり、社内だけでは解決できない場合に、外部サービスに頼ることも有効な解決策です。

メンタルヘルス対策を行う企業のメリット

メンタルヘルス対策による企業へのメリットは非常に大きいものです。反対に対策を怠ると、従業員の士気が下がったり企業の評判が落ちたりするおそれがあります。

従業員の生産性が向上する

メンタルヘルスの低下は、集中力や判断力の低下につながり、ミスや事故の原因となって企業全体の生産性を下げます。また、不調によるネガティブな雰囲気は個人だけの問題にとどまらず、周囲にも影響して社内の士気を下げる可能性があります。組織全体の活力を高め生産性を向上させるには、メンタルヘルスへのケアを徹底することが重要です。

企業の評判が良くなる

企業の評判が良くなると、人材の確保がしやすくなるメリットがあります。メンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいることは、労働者にとって魅力的なポイントです。イメージが良ければ応募者が増え、採用力の強化につながります。また、「一般財団法人日本次世代企業普及機構(ホワイト財団)」からホワイト企業として認定を受け、企業PRに活用してイメージアップにつなげることも可能です。

ハラスメントの未然防止につながる

メンタルヘルス対策の実施は、ハラスメントの未然防止にもつながります。メンタルヘルスの不調には、社内のハラスメントが原因であるケースも多いためです。ハラスメントが発生すると、安全配慮義務違反や使用者責任など、企業責任を問われる問題に発展する可能性もあります。大きな問題を起こさないためにも、積極的なメンタルヘルス対策への取り組みが求められます。

企業が実際に取り組んだメンタルヘルス対策の事例

メンタルヘルス対策を進めたい企業の中には、進め方がわからないという企業も多くあります。そうした場合は、すでに取り組んでいる企業の事例を参考にするのがおすすめです。ここでは、西日本ビジネス印刷株式会社と長府工産株式会社の事例を取り上げます。

西日本ビジネス印刷株式会社(福岡県福岡市)

総合印刷業を中心に、ソフト開発やコンテンツ作成などの事業も展開する企業です。メンタルヘルス対策として、相談窓口の設置、メンタルヘルス研修、推進委員会の設置と定期開催、職場環境改善活動、毎朝のラジオ体操、地域清掃を通じた社会貢献活動、セルフチェックの実施などに取り組んでいます。職場のメンタルヘルス対策に関する無料の公的支援を受けながら、社内で「心の健康づくり計画」を進め、社内外に周知することで方針を明確に示しているそうです。ストレス関連のセルフチェックも毎月実施し、変化に気づける取り組みを行っています。

長府工産株式会社(山口県下関市)

1980年に住宅設備機器メーカーとして設立された企業です。ヘルスアドバイザーサービス「ウェルネスチェック」(全社員対象)、事業場内メンタルヘルス推進担当者研修、ラインによるケアの研修、新卒リーダー研修でのメンタルヘルス研修、資料配布、小規模事業場向けの労働安全衛生対策の利用などに取り組んでいます。きっかけは社内からの「社員の心の健康状態をチェックしよう」という提案でした。まず中央労働災害防止協会のヘルスアドバイスサービス「ウェルネスチェック」を利用して心の健康状態のチェックを開始し、その後、事業場外資源である同協会から助言を受け、1年間の準備期間を経て「メンタルヘルス活動開始」を全社に発表したそうです。現在は、全社員に情報を提供できるよう資料を公開するなどの対策をしています。

テレワークにおいてもメンタルヘルス対策は必要

テレワークと聞くと、人間関係のストレスが減るとイメージする人もいるでしょう。しかし、テレワークの環境下でもメンタルヘルスの不調が起こる可能性があります。

テレワークでもメンタルヘルス対策が必要になる理由

テレワークの問題点として、仕事と休みの切り替えが難しいことが挙げられます。切り替えができないと長時間労働になりやすく、メンタルヘルスに影響が出る可能性が高まります。また、1人で仕事をするため、管理監督者が変化に気づきにくく、知らないうちに不調に陥るケースも見られます。運動不足や睡眠の問題、自律神経の乱れなどを引き起こしやすくなる傾向もあります。こうした問題を防ぐため、テレワークでも一次予防を徹底することが大切です。

テレワークにおけるメンタルヘルス対策の具体例

テレワークでの不調は、コミュニケーション不足が原因となる場合も多くあります。そのため、コミュニケーションの量を増やすことが具体的な解決策の一つです。コミュニケーションを増やせば、管理監督者が部下の変化に気づきやすくなります。また、仕事と休みを切り替えるには、適切な勤怠管理が必要です。正しく勤怠管理を行えば、過度な労働を防げます。運動不足などについては、健康的な生活を意識するよう定期的に呼びかけるなどの対策がおすすめです。

メンタルヘルス対策を徹底して社内を活性化させよう

メンタルヘルス対策は、一次予防・二次予防・三次予防と、段階ごとに方法を変える必要があります。また、すべてを社内で完結させるのが難しい企業もあるでしょう。その場合は、外部サービスを利用し、迅速に相談できる環境を整えることが大切です。関連する法令にも抵触しないよう、企業には徹底したメンタルヘルス対策が求められます。