「お金がない」と訴え続ける社員のサイン|人事・管理職の気づきと対応

「お金がない」「貯金が減るのが怖い」――実際には生活に困っていないはずの従業員が、強いお金の不安を繰り返し口にする。あるいは「自分は取り返しのつかない失敗をした」と些細なことを過度に思い詰める。こうした、現実とかけ離れた強い思い込みが続く状態は、メンタル不調のサインであることがあります。本記事では、人事・管理職が職場でこうした変化にどう気づき、本人を傷つけずにどう対応し、支援につなげていけばよいかを解説します。なお、本記事は一般的な情報であり、診断や治療を目的とするものではありません。

「現実より自分を低く・乏しく感じる」状態に気づく

メンタル不調のなかには、自分や自分の状況を実際よりも小さく・乏しく感じてしまう状態があります。物事を実際より過大にとらえてしまう状態とは逆向きで、本人は強い苦しみを抱えています。職場では、たとえば次のような形で現れることがあります。

  • 身体の不調への強い不安:ちょっとした体調の変化を重い病気ではないかと過度に心配し、業務に集中できなくなる。
  • 過度な自責:ほんの些細なミスを「取り返しのつかないことをした」と思い込み、必要以上に落ち込む。
  • お金への強い不安:実際には不足がないのに「このままでは生きていけない」と思い込み、強い不安に苛まれる。

こうした状態は本人にとって非常に辛く、放置すると業務遂行や勤怠に影響が出ることもあります。管理職は「気にしすぎだ」と片付けず、変化のサインとして受け止めることが大切です。

「お金がない」という強い不安が続く場合

たとえばお金への不安では、実際には生活に困っていないにもかかわらず「貧困である」と強く思い込み、過剰な節約に走ってしまうことがあります。職場では、急に身だしなみや食事を切り詰める様子が見られたり、待遇や賃金について現実離れした不安を繰り返し訴えたりすることがあります。比較的高い年齢層にみられることが多いといわれますが、年齢を問わず起こり得るものです。こうした強い思い込みが続く場合は、本人が深く苦しんでいるサインととらえ、丁寧に向き合う必要があります。

適切な支援につながれば改善が期待できる

こうした状態は本人にとってとても苦しいものですが、適切な相談・支援につながることで、不安から解放されていくことが期待できます。管理職や人事が本人を孤立させず、産業医・産業保健スタッフ・専門の相談窓口へつなぐことが、回復への第一歩になります。会社として、相談先の情報を平時から周知しておくことが、いざというときの早期対応につながります。

なお、本人が医療機関の受診をためらう背景に治療費の不安がある場合、厚生労働省の「自立支援医療」など、経済的な負担を軽減できる公的制度があります。こうした制度の存在を会社として把握し、必要に応じて案内できるようにしておくと、本人が安心して支援を受けやすくなります。

管理職・周囲の接し方のポイント

強い思い込みを抱える従業員への接し方には、少し注意が必要です。「何を言っているんだ、問題ないじゃないか」と頭ごなしに否定しても、本人にはそれが見えていないため、「誰も理解してくれない」というさらなる落ち込みにつながってしまうことがあります。

思い込みを真っ向から否定するのではなく、まずは本人が不安を感じているという事実を受け止め、「心配しているよ」とそっと伝えることが大切です。そのうえで、専門の相談窓口や産業医への相談をやわらかく促すのが望ましい対応です。本人が不調の自覚を持てていないこともあるため、まずは話を聴くことから始め、本人の状態に合わせて段階的に専門の支援へつないでいきましょう。職場全体でこうした理解を共有し、メンタル不調を早期に発見して適切な支援につなげる体制を整えることが、従業員の安心と組織の安定につながります。

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