DV・家庭の問題を抱える従業員に職場はどう向き合うか――気づきと専門窓口への接続
家庭内の暴力(DV)や、それに苦しむ従業員の問題は、職場とは無関係に思えるかもしれません。しかし、家庭で深刻な負担を抱える従業員は、心身の不調や勤怠の乱れという形で職場にも影響が表れることがあります。事情を知らない人は「つらいならなぜすぐ別れないのか」と感じがちですが、そこには人の心の複雑さがあります。本記事では、人事・管理職が知っておきたい背景と、相手を追い込まずに支援につなぐ視点を整理します。
「すぐに離れられない」のはなぜか
つらい状況から離れることが難しくなる背景には、いくつかの要因があるといわれています。これは家庭内の問題に限らず、職場の力関係のなかで起きるハラスメントなどにも通じる心理です。
- 良い面を手放すことへの不安……関係が持つ良い面(安心や居場所、生活基盤など)を失うことへの抵抗。人は、つらい現実を直視して困難な決断をするより、良い面に頼ろうとする側面があるといわれています。
- 力関係による感覚の麻痺……心が不安に占拠されると、受けている被害への感覚が麻痺してしまい、自分から状況を変えることが極めて難しくなることがあります。
「逃げられないのは本人が弱いから」ではありません。誰でも陥りうる心理だと理解しておくことが、適切な関わりの出発点になります。
力の差が「抜け出せない状況」を作る
家庭内の暴力では、加害者と被害者の間に身体的・経済的・社会的な力の差があり、その差を背景に、被害を受けても逃れにくい支配状況が作られてしまいます。さらに、加害者は恐怖の対象であると同時に、被害者にとっては愛着の対象でもあり、「それでも信じたい」という複雑な心理が働くこともあります。だからこそ、当事者が一人で状況を変えるのは難しく、外部からの支援が必要になります。
この「力の差」と「抜け出しにくさ」という構造は、職場におけるハラスメントの背景とも重なります。上司と部下、正規と非正規といった立場の差があると、被害を受けた側が声を上げにくくなる――人事・管理職は、この共通点を意識しておくと、職場の相談対応にも活かせます。
職場でできることと、専門窓口への接続
家庭の事情は極めてプライベートな領域であり、職場が立ち入って解決するものではありません。人事・管理職の役割は、問題を解決することではなく、不調のサインに気づき、本人が安心して相談できる場と、適切な専門窓口への橋渡しを用意しておくことです。
- 勤怠の乱れ、急な体調不良、表情の変化などに気づいても、家庭の事情を根掘り葉掘り問いたださない。
- 「最近つらそうに見えるが、何か力になれることはあるか」と、本人が話したいときに話せる余地を残す。
- 本人の同意なく事情を他者に共有しない。プライバシーと安全に最大限配慮する。
- 専門的な支援が必要な場合は、配偶者暴力相談支援センター(DV相談)などの公的窓口や、産業医・社内外のカウンセラーにつなぐ。
家庭であれ職場であれ、力の差を背景にした被害は、被害者が一人で抱え込みやすいものです。だからこそ、職場が「責めずに受け止め、専門家につなぐ」窓口として機能することが、従業員を支える大きな力になります。
一人で抱え込ませない相談体制を
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