ADHDの人の特性は仕事にどのように影響するのか?そしてその援助方法は?
ADHD(注意欠如・多動症)の特性は、仕事の場面でさまざまな形であらわれることがあります。本記事では、人事・管理職の視点から、ADHDの特性が仕事にどのように影響するのか、そして職場としてどのように環境を整え、本人を支援できるのかを整理してご紹介します。特性のあらわれ方には個人差があり、ここでの内容は一般的な傾向であること、また診断は専門医療機関が行うものであることをご理解ください。
ADHDの特性が仕事に与える影響
ADHDの特性のひとつに、注意が散りやすい点があります。これが仕事の場面で次のような形であらわれることがあります。管理職としては、これらを「本人の努力不足」と決めつけず、特性として理解することが支援の出発点になります。
- 物をなくしやすい:携帯電話や鍵が見つからず、探しものに時間を取られることがあります。重要書類の置き場所がわからなくなることもあり、業務に支障が出る場合があります。
- 忘れものが多い:重要な書類の入ったバッグを電車内に置き忘れるなど、忘れものが業務上の課題になることがあります。
- 気が散りやすい:周囲の動きや音が気になり、急ぎの作業中でも集中を保ちにくいことがあります。
- 話を最後まで聞き取りにくい:指示を最後まで聞ききれず、内容を取り違えてしまうことがあります。「A社のBさん」への連絡を「B社のAさん」と取り違えるような、いわゆるケアレスミスが起こりやすい傾向があります。
- 人間関係を築きにくい:遠回しな表現が苦手で、思ったことをそのまま伝えてしまうことがあります。悪気はなくても相手を傷つけてしまい、対人関係でつまずきやすい場合があります。こうした経験が重なると自己否定感が強まり、そのストレスから不調を併発することもあるとされています。職場での孤立を防ぐ配慮が重要です。
職場でできる合理的配慮・支援の工夫
特性に合わせた環境づくりや工夫によって、困りごとは大きく軽減できることがあります。人事・管理職が職場で取り入れられる主な支援方法をご紹介します。
- 物の置き場所を決める:「修正テープは机の一番上の引き出しの右端」のように定位置を決めると、探しものが減ります。場所で覚えにくい場合は、「緑の箱に入れる」など色で覚える方法も有効です。
- メモを活用して忘れものを防ぐ:メモ自体をなくしてしまうという声も多いため、手首に巻けるタイプのメモなど、身につけられるものを活用するのもひとつの方法です。
- 指示は口頭より書面で渡す:聞き間違いを防ぐため、重要な指示はメモやチャットなど文字に残る形で渡すと確実です。手間はかかりますが、ミスの防止につながります。
- 荷物はひとつにまとめる工夫を促す:バッグの置き忘れを防ぐには、斜め掛けバッグを使う、荷物をひとつにまとめるなどの工夫が役立ちます。
- 視覚情報を遮る工夫をする:必要・不要な情報の取捨選択が苦手なため、不要な視覚情報まで取り込んで気が散ってしまうことがあります。デスクの周囲を仕切りで囲うなどして視界を整えると、集中しやすくなります。
- 耳栓やヘッドホンの使用を認める:聴覚情報についても同様です。静かな環境をつくることで、不要な音を遮り、集中力を高めやすくなります。職場のルールとして柔軟に認める配慮が有効です。
- 孤立させないよう配慮する:過去の対人トラブルから自己否定感を抱えていることもあります。できたことや努力を認め、孤立を防ぐ姿勢が大切です。受け入れられる経験が増えると、少しずつ自己肯定感が育まれていきます。
特性は「強み」にもなる
ADHDの特性は、活かし方しだいで大きな強みにもなります。ひとつのことに集中し続けるのが苦手という特性は、裏を返せばアイデアが豊富で好奇心が旺盛ということでもあります。コツコツと地道な作業は苦手でも、いざ行動力が求められる場面では、フットワークの軽さが強みになることが少なくありません。管理職としては、本人の強みが活きる業務にアサインするなど、特性を前提とした人員配置・業務設計の視点を持つことが、本人の活躍と組織の成果の両方につながります。
当事者からは、「わかってくれなくてもいいから、わかろうとしてほしい」という声がよく聞かれます。同じ特性でも一人ひとり状況は異なり、完全に理解し合うのは難しいかもしれません。それでも、わかろうとしてくれる上司や同僚が身近にいるだけで、本人の安心感や情緒の安定につながります。気になる言動を目にしたときは、頭ごなしに注意するのではなく、少し立ち止まって「なぜだろう」と背景を考えてみてください。必要に応じて、産業医や社内外の相談窓口・従業員支援プログラム(EAP)といった専門的な支援につなぐことも検討しましょう。
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