従業員のトラウマ・PTSDに人事・管理職はどう気づき支援するか

事故・災害・ハラスメント・いじめなど、強い衝撃を受ける出来事は、職場でも起こり得ます。そうした経験が従業員の心に深く残り、業務や日常生活に影響することもあります。本記事では、トラウマ(心的外傷)を抱えた従業員に対して、人事・管理職がどう気づき、どう支援していくかを整理します。

トラウマとは

人は生きていくなかで、さまざまな問題や悩みを抱えます。その多くは、人に話したり気持ちを吐き出したりすることで、心の傷としては残りません。

しかし、その出来事が予想以上に大きなものであったとき、心に深く残ることがあります。たとえば、犯罪被害・事故・自然災害・虐待・DV・ハラスメント・いじめなど、その人の心の根っこに残り、忘れられない出来事のことを「トラウマ(心的外傷)」と呼びます。職場で起きたハラスメントや事故、重大なクレーム対応などが原因となることもあり、人事として無関係ではいられない問題です。

職場で気づきたいトラウマのサイン

トラウマには、次のような様子が見られることがあるとされています。職場で従業員にこうした変化が見られたら、注意して見守るきっかけになります。

  • つらい出来事が何度もよみがえり、強い恐怖心や無力感から何もやる気が起きなくなる
  • 出来事を思い出すきっかけに触れたとき、その記憶が突然・鮮明によみがえる(フラッシュバック)
  • 眠れなくなる、悪夢を繰り返し見る、一つのことに集中できなくなる
  • ささいなことで怒ったり泣いたり驚いたりと、感情のコントロールが難しくなる
  • 罪悪感や疎外感を覚える
  • 以前は楽しめていたことへの関心が薄れ、人に心を許しにくくなる

※フラッシュバックとは、強いストレス体験で残った記憶が、突然かつ鮮明に思い出される現象を指します。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)について

トラウマに伴う症状が一定期間以上続いたり、日常生活や業務に支障をきたしたりする場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ばれる状態につながることがあるとされています。命の安全が脅かされるような出来事によって強い精神的衝撃を受け、著しい苦痛や生活機能の障害が生じる状態と説明されています。

こうした状態がどの程度のものか、どのような対応が必要かの判断は、専門の医療機関に委ねるべきものです。管理職や人事が自己判断で病名を決めつけたり、回復を急かしたりすることは避けましょう。職場の役割は、本人が安心して専門的な治療や支援につながれるよう環境を整えることです。

人事・管理職にできる支援

トラウマやPTSDの症状は、時間とともに自然に和らいでいく場合もありますが、長引いた場合には、医療機関での治療やカウンセリングなどの心理的な支援が必要になることがあります。早めに支援につなぐことが、回復の助けになると考えられています。

職場としては、次のような対応が考えられます。

  • 本人を追い詰めず、話を聞ける場を用意する。ただし無理に出来事を語らせない
  • 産業医や社内外の相談窓口、専門のカウンセラーへつなぐ
  • ハラスメントや事故が原因の場合は、再発防止と職場環境の改善に取り組む
  • 復職・継続勤務にあたっては、状況に応じて業務量や配置を調整する

まとめ

トラウマやPTSDは、その苦しさが本人にしか分かりにくいものです。だからこそ、従業員が一人で抱え込まず、信頼できる相手や専門家に相談できる体制を整えることが、人事・管理職の重要な役割です。気になる従業員がいる場合は、自己判断をせず、専門の相談窓口やカウンセリング、医療機関への相談を促しましょう。