生きづらさを抱える従業員にどう向き合うか|人事・管理職のための理解と専門支援への接続
「人にどう思われているかが過剰に気になる」「どうしても自信が持てない」「他人のちょっとした言葉で大きく傷つく」——こうした漠然とした生きづらさを抱えながら働いている従業員は少なくありません。表面的には大きな問題が見えなくても、本人は対人関係や仕事の場面で強いストレスを感じていることがあります。人事・管理職にとって、こうした生きづらさの背景を理解し、職場としてどこまで関わり、どこから専門家につなぐべきかを知っておくことは、メンタルヘルス支援の質を高めます。本記事では、心理面の背景にある考え方を素材に、職場での向き合い方を整理します。
長く続く生きづらさが職場に表れるとき
人の心の深いところには、自己イメージや人とのかかわり方の土台となる「ものの見方の枠組み」があるとされています。これは長い時間をかけて形づくられ、何か出来事があったときに反応し、その人特有の考えや感情を生み出します。
この枠組みの中には、本人を苦しめる方向にはたらくものもあります。たとえば「自分はいつか見捨てられる」「自分は人より劣っている」「気を抜くと失敗する」といった根深い思い込みです。こうした思い込みは、職場では次のような形で表れることがあります。
- 過剰に他者の評価を気にする:上司や同僚の何気ない一言に強く反応し、長く引きずってしまう。
- 自信のなさ:十分な力があっても「自分にはできない」と感じ、挑戦や発言をためらう。
- 自分を後回しにする:頼まれごとを断れず抱え込み、負担が限界を超えてしまう。
- 過度に自分や他人を追い詰める:完璧を求めすぎて余裕を失い、ミスを過剰に責める。
こうした傾向は、本人の性格の問題として片づけられがちですが、その背景には本人にもコントロールしにくい根深い枠組みがあることがあります。人事・管理職がこの点を理解しておくと、「なぜあの人はこうなのか」と決めつけるのではなく、配慮ある対応を取りやすくなります。
職場でできること・できないこと
長年かけて形づくられた心の枠組みは、職場のはたらきかけだけで変えられるものではありません。職場の役割は、本人を変えようとすることではなく、本人が安心して力を発揮できる環境を整え、必要なときに専門の支援へつなぐことです。
具体的には、評価を一方的に突きつけるのではなく根拠とともに丁寧に伝える、頑張りや成果を言葉にして認める、業務量や役割を本人と相談しながら調整する、相談しやすい接点を保つ——といった日々の関わりが、本人の負担を和らげます。一方で、本人の生きづらさそのものに踏み込んだ助言や、過去の生育環境に立ち入った話は、職場が担う役割を超えています。こうした深い部分のケアは、専門のカウンセラーや医療機関の領域であることを理解しておく必要があります。
専門の支援へつなぐ視点
本人が長く生きづらさを感じ、対人関係や仕事に支障が出ている場合は、専門家による継続的な支援が有効なことがあります。心理の専門家は、本人が抱える根深い思い込みに本人と一緒に向き合い、より生きやすい考え方や対処を身につけていく手助けをします。こうした取り組みには時間がかかることも多く、職場が短期間で結果を期待するものではありません。
人事・管理職としては、「相談することは特別なことではない」というメッセージを社内に浸透させ、社内の相談窓口や産業医、専門のカウンセラーへつながる導線を整えておくことが大切です。職場が安心して働ける土台を提供し、深い部分のケアは専門家に委ねる——この役割分担を意識することで、生きづらさを抱える従業員を無理なく支えていくことができます。
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