うつ病患者が治療で気をつけること

・うつ病とは
うつ病は、脳内物質セロトニンの量が減ってしまい、極端に気分の落ち込む状態が2週間以上続く疾患です。日本では現在、男性の10人に1人、女性の5人に1人が陥るメジャーな疾患です。

・うつ病の症状
うつ病には「体の症状」と「心の症状」が現れます。

体の症状の代表例は不眠です。不眠には、眠りにつけない、早朝覚醒、中途覚醒など複数のタイプがあります。そのタイプに合わせて、医師の処方により適した薬物が投与されます。
そのほか、食欲の低下と体重の減少、疲れやすい、口が乾く、便秘や下痢、めまいやふらつき、動悸、息切れなどの自覚症状を伴うこともあります。

心の症状としては、寂しさを覚えたり涙もろくなったりします。
物事への興味も薄れ、これまで親しんでいた趣味を楽しむ気力さえ失ってしまいます。
自己を否定的に捉え、重症になると自殺願望をもつ患者もいるほどです。

・うつ病の治療において大切なこと
うつ病ではないかと感じたときは、速やかに医師の診断を受ける必要があります。
受けるべき診療科は、「精神科」「心療内科」「メンタルクリニック」などです。
うつ病と診断した医師は患者に対して、「十分な休養が取れる環境」や「投薬治療」「精神療法」などの手段を講じます。

十分な休養が取れる環境に関しては、ストレス要因が職場にある場合、休職の手段をとることもあります。
多くの場合は自宅療養です。自宅が療養できる環境でない場合は、入院することもあります。
投薬については、セロトニンを増加させるSSRIなど、抗うつ薬が使用されます。
その他患者の症状に合わせて、睡眠導入剤や睡眠延長剤、気分安定薬、抗不安薬などが処方されます。
精神療法は、医師とのカウンセリングにより実施されます。これは、患者のネガティブ志向をポジティブ志向に変えていくものです。

うつ病の治療を進める上で大切なことは、どのような内容でも主治医に相談することです。
休職するかどうかや薬の飲み方など、必ず主治医に相談します。
特に、抗うつ剤を自己判断で利用中止するのは大変危険ですので、必ず主治医に相談してから中止しましょう。

また、うつ病は再発率の高い病気です。統計データによると、1年間程度の軽度のうつ病患者でも、その再発率は50%です。
再発させないためには、うつ病という病気がどのような病気であるのかの理解を深め、
「完治」ではなく「寛解」を目指すことが大切です。
寛解とは、病状がおさまって穏やかな状態になることです。

うつ病の治療中に患者が心がけるべきことは、「生活リズムを整える」ことです。
まずは食生活を整え、栄養バランスのよい食事を1日に3回摂取します。
睡眠の質を向上させることもとても重要です。主治医と相談しながら、きちんと睡眠の取れる薬を処方してもらう必要があります。
そのためには、寝付きが悪いのか、中途覚醒するのか、早朝覚醒なのか、患者自身が睡眠障害の現状を把握する必要があります。
できるだけ早く就寝するのも心がけたいことです。たとえ休日でも、夜更かしや寝すぎには気をつけましょう。
毎日適度な運動をすることも大切です。たとえばストレッチやラジオ体操、散歩などの習慣をつけるとよいでしょう。

なお、自分の体の状態を客観的に把握することも大切です。体に不調が現れる前には、かならず「前兆」があります。
前兆を自分で把握できるようになれば、こまめな休養が取れ、仕事で無理をしすぎることもなくなります。

回復時には、職場の人にもうつ病について理解してもらうことが重要です。
うつ病になる人は、何事も頼まれると断りきれない傾向にあります。自分の仕事の処理能力をありのまま把握し、時には仕事を断ることも大切です。
仕事をする際にも100%の力を発揮せずに、少しゆとりをもったくらいのやり方がよいでしょう。
「明日に回せる仕事は、今日はしない」というくらいの気持ちになることが大切です。