早期発見につながるうつ病の行動パターン

うつ病は、誰もが罹患するリスクを有する心の病です。
現在では知名度も上がり、「こころの風邪」などと呼ばれることもあります。
しかし、目に見えない疾患であるため、
気づいたときには重症化していたということも少なくありません。

うつ病を発症すると、無意識に行動の変化を起こしている場合があります。
周囲がその変化に気づくことは、
うつ病の早期発見につながるとても重要なポイントです。

今回はうつ病によくみられる行動パターンをご紹介いたします。

わかりやすい変化として、口数が減るというものがあります。
自ら会話をしなくなり、どこか物静かになったように見えることも多いようです。

このとき、無理に口を開かせようとしては、逆効果になってしまいます。
うつ病の方は休養を必要としている状態なので、無理に会話をさせることは大きなストレスとなるからです。
休養の時間を十分にとることができるよう、そっとしておくとよいでしょう。

また、集中力の低下、単純ミスの増加などもみられます。
例えば、これまでにはなかったミスが増えたり、単純作業に時間がかかったりして、
思い通りに仕事を進められないことがあります。
なぜ今まで通りにできないのかと
うつ病の方本人が、ストレスに感じていることも多いのです。

このような変化には周囲も気づきやすいのですが、
よかれと思って叱責などすると、かえってストレスを与えてしまう場合もあります。
注意深く見守って罹患を早期発見することができれば、
職場で適切な配慮ができるうえ、休職などの対応をとることも可能です。

学校や会社に遅刻、欠勤や欠席をすることが増える場合もあります。
これは、無遅刻無欠席など、今まで真面目に通勤通学していた方に特に多くみられる傾向です。
うつ病は、真面目で責任感の強い性格の方が罹患しやすいため、
まるでそのリバウンドであるかのように、通勤通学できなくなってしまうのです。
また、ストレスの原因が仕事や学業、人間関係にある場合も
その場所を避けるようになります。

この場合も、無理に通勤通学を促すのではなく、十分な休息をとることが大切です。

普段できていたことができなくなるのも、うつ病の方によくみられる行動パターンです。
健康な状態であれば、日常的にスポーツや趣味に励んだり
テレビや新聞からの情報に親しんだりして、日々の生活を楽しみます。
しかしうつ病になると、それらの楽しみを感じなくなり
疲労感だけがつのるようになってしまいます。

今まで楽しんでいたことに取り組まなくなったり
趣味や人間関係の場から遠ざかるようになったりしたら、注意が必要です。
うつ病の方は、健康なときに楽しんだことを楽しむだけの心的エネルギーがない状態になっています。
趣味などの活動を行っているか、周囲から孤立していないか
よく目を配るとよいでしょう。

食欲の低下も、うつ病の方によくみられます。
いつもより少食になって、体重が大幅に減少してしまうこともあります。
食卓で食べ物を残すことが多くなったり、目に見えてやせてしまったりする場合は
食欲が低下しているサインかもしれません。

きちんと食事を摂ることができないようだと、周囲はとても心配になるはずです。
しかし、無理やり食事を強要するのではなく、そっと見守ることが大切です。

これらの行動パターンが2週間以上継続する場合、うつ病の可能性が高くなります。
事前に知識を深め、早い段階で変化に気づくことができれば
うつ病の発症自体を防ぐこともできるのです。

しかし、このような行動パターンの変化に自ら気づくことは難しいうえ
本人にすれば、無意識で行っていることも多いものです。
そのため、周りから「怠けている」「真面目にやっていない」などと
誤解されることも少なくありません。
こうなると、周囲の理解を得られず症状がより悪化するという
悪循環に陥ってしまいます。

身近な人間が行動パターンの変化に気づき、
受診を勧めたり休養させたりすることは大変重要です。
いつもと違うところがないかよく目を配り、
このような行動がみられた際は速やかに専門医を受診するようにしましょう。