「不安」ってどんな気持ちだろう?

私たちが漠然と抱える「不安」が日常生活にまでひどく支障をきたすことは、不安障害や不安症といった病名とともによく知られているところです。
元々、不安というのはだれもが有する感情で、何か心配ごとが起こったり、どうすべきか分からなくなったりするときに生まれてきます。別な側面から見るとそれは、物事に用心して対処するために必要な、大切な感情であるともいえます。

 

そもそも、「不安」とひと口に言っても、実際にはどのような感情なのでしょう。不安は英語でanxietyであり、心理学的には恐怖fearと対照させて使われることが多いものです。恐怖といえばそれは恐れる対象が明確ですが、不安にはそのようなものがない、もしくはあっても曖昧であり、「なんとなく」不安なものなのです。

 

もともとはっきりとしていない感情であるためか、日本語でも「不安」の類義語は多く存在します。それらの言葉をたどりつつ、不安とはどのような気持ちなのかを、ここで改めて考えてみましょう。

 

(1)心配する
周りの人や物事に対して気にかけている状態のことで、この場合には明確な対象があります。「不安」は自分の内側から起こる感情であり、特に明らかな対象をもたないのが両者の大きな違いです。
他の表現では、ひやひやする、おどおどする、やきもきするなどの言い方があります。
(2)気がかり
気にかかって落ち着かない状態のことです。悩ましい、危惧するなどの言い方があります。
(3)心もとない
安心感がない状態のことです。他には、不安気、後ろめたいなどの類語があります。
(4)不満
心にたまった不満や不安な感情です。ストレス、ジレンマ、フラストレーション、モヤモヤ、憂鬱などの類語があります。
(5)動揺
不穏な変化に対して起こる感情です。他にも、おののき、混乱、心騒ぎなどの類語があります。
(6)憂い
何か良くないことが起こるのではないかと予感するときの感情です。憂慮、危惧、胸騒ぎなどの類語があります。

他に、ビジネス用語で不安を「懸念」と言い換えることもあります。

 

「不安」に類似する言葉は、実にたくさんあります。改めてそれらを眺めてみると、「不安」というのがいかにあいまいで、もやもやとしたはっきりしない感情であるかということがよくわかります。

「不安」がわき起こると、何ともスッキリしないもやもやした嫌な気分になります。しかし逆に、もやもやを心に抱えておくことのできる強さ、あいまいなものをそのまま受容する柔軟さこそが、不安に上手に対処する力として私たちの心を救うのかもしれません。