早期不適応スキーマを改善するために

早期不適応スキーマとは

人にどう思われているか、過剰に気になってしまう。どうしても自信をもてない。自分は他の人とは異質で、周囲から浮いている感じがする。他人のちょっとした言葉で大きく傷ついてしまい、立ち直れなくなる。頭では、そこまで気にしなくてもいいとわかっているのに、心ではそう思うことができない。

そのような、漠然とした生きづらさを感じたことはないでしょうか。それはもしかしたら、「早期不適応スキーマ」によってもたらされる生きづらさかもしれません。

スキーマ療法

早期不適応スキーマを改善していくための治療法として、「スキーマ療法」があります。スキーマ療法とは、米国の心理学者ジェフリー・ヤングが、1990年代に開発した治療法です。

ヤング博士は、認知療法の実践家でした。認知療法とは、落ち込みや不安などの原因となる「考え方のクセ」を、より適応的なものに変えていく治療法で、うつ病などに効果的であることが示されています。

ヤング博士は実践を重ねていく中で、シンプルなうつ病や不安障害のクライエントは少ないことに注目しました。そして、単に症状があるだけではなく、心の深いレベルで傷ついており、症状が良くなるだけでは生きづらさが改善されないクライエントが多いことに気づいたのです。

そこでヤング博士は、「早期不適応スキーマ」という概念に焦点を合わせ、それらのクライエントを助けるような治療法を開発することにしました。

 

スキーマと早期不適応スキーマ

私たちの心の深いレベルには、「スキーマ」と呼ばれる自己イメージや人間観、世界観が潜んでいます。何らかのできごとが起こるとこのスキーマが反応し、スキーマに沿った考え方や感情が生じます。

「早期不適応スキーマ」とは、幼少期から形成され、現在の自分を苦しめるようなスキーマを指します。主に、両親など養育者との関わりの中で、「愛されたい」「理解されたい」など子どもとして当然の欲求がきちんと満たされない場合、辛い環境の中を生き延びるため、いわば自分を守るために形成されていきます。

ここでポイントとなるのは、子どもの頃はこのスキーマが自分を守るのに役立っていても、大人になった後は、自らに不適応感を引き起こすという点です。

例えば、家庭環境が非常に不安定で、いつ親に見捨てられるかわからない状況の子どもが、「私はいつか大切な人(この場合は親)に見捨てられる」と信じるようになるのは、ある意味理にかなっています。そうすることで、親に捨てられないように賢く立ちふるまうことができるからです。

しかしながら、大人になってからもそのように信じ続けているとどうでしょうか。恋人や配偶者など、新しくできた大切な人は、親とは違う存在です。にもかかわらず「私はいつか大切な人に見捨てられる」という早期不適応スキーマをもち続けると、恋人や配偶者にいつ見捨てられるのかと、心の奥底は不安で仕方ありません。そのため、少しでも「見捨てられた」と思わせられるような状況になると、大きく取り乱してしまうなどの問題に発展してしまいます。

これはほんの一つの具体例ですが、早期不適応スキーマにはさまざまな領域があり、その中でまた種々のタイプに分類されます。次がその代表的な5領域です。

①人との関わりが断絶されてしまうこと

「愛されたい。守ってもらいたい。理解されたい」という幼少期の欲求が満たされない場合に形成されるスキーマ領域。

②「できない自分」にしかなれないこと

「有能な人間になりたい。いろいろなことをうまくできるようになりたい」という幼少期の欲求が満たされない場合に形成されるスキーマ領域。

③他者を優先し、自分を抑えること

「自分の感情や思いを自由に表現したい。自分の意思を大切にしたい」という幼少期の欲求が満たされない場合に形成されるスキーマ領域。

④物事を悲観し、自分や他人を追い詰めること

「自由にのびのびしたい。楽しく遊びたい。生き生きと楽しみたい」という幼少期の欲求が満たされない場合に形成されるスキーマ領域。

⑤自分勝手になりすぎてしまうこと

「自律的な人間になりたい。自分をコントロールできるようになりたい」という幼少期の欲求が満たされない場合に形成されるスキーマ領域。

これら5領域のそれぞれに、さらに細かい早期不適応スキーマのタイプが分類されており、計18タイプの早期不適応スキーマがあるとされています。

さらに、これらの早期不適応スキーマが活性化された際、その対処のパターンもまた人それぞれです。早期不適応スキーマに巻き込まれてしまうパターン、回避してしまうパターン、それを過剰に乗り越えようとするパターンがあります。しかしそのいずれも、結局は生きづらさにつながってしまいます。そして長年かけて形成されたこれらのパターンを、すぐに修正することは非常に大変な作業です。

しかしながら、スキーマ療法の開発によって、これを修正する方法が確立されたのです。

スキーマ療法では、具体的にどのようなことがなされるのかを説明します。

スキーマ療法の特徴

最初に、現在の自分を苦しめている「早期不適応スキーマ」を、カウンセラーと一緒に同定していきます。幼少期の生育環境、親との関わり、そこで満たされなかった思いが、現在の自分にどのような影響を与えているのかを理解することが大切です。
その後、さまざまなワークを通して、早期不適応スキーマを修正する作業に入ります。早期不適応スキーマによって、強烈な感情や考えに圧倒されたり、不適切な対処を取ったりしてしまうのが判明したら、今後いかにして適切な捉え方や対処へと変容させていくのかを検討します。早期不適応スキーマがどれほど正しいのか検証をしたり、対人関係スキルの練習をしたりすることもあります。また、より健康的で適切な対処方法を身につける練習をすることもあるでしょう。

ここで重要なのは、カウンセラーとの関係性です。

スキーマ療法におけるカウンセラーは、ただ話を聞いてくれる人でも、何かを教えてくれる人でもありません。カウンセラーは、あなたの「親」になってくれます。もちろん治療の場面ですから、いくら「親」になってくれたとしても、できることとできないことはあります。それでも、「愛されたい」「理解されたい」「認めてもらいたい」など、本当の親に満たしてもらえなかった感情がカウンセラーによって満たされていくことが、スキーマ療法の大きな特徴といえるでしょう。

カウンセリングの中では、早期不適応スキーマに基づいた言動がどうしても出てきてしまうものです。その際、カウンセラーは共感的にかつしっかりとそれを指摘し、クライエントが早期不適応スキーマに向き合う手助けをしてくれることも、この療法の特徴です。

このような取り組みを通して、クライエントの癒しと自己受容を促進し、健康的で成熟したスキーマを獲得させていくことを目標とします。

スキーマ療法は、境界性パーソナリティ障害など、従来の治療では難治性とされる疾患への効果も検証されています。特に子どもの頃から漠然とした生きづらさを感じ、さまざまな治療を試してみたけれども、いまひとつ効果を感じられなかった方に向いているかもしれません。

しかしながら、スキーマ療法は年単位で実施されることが多く、即効性を求めている方は注意する必要があります。先述の通り、早期不適応スキーマは幼少期から長年かけて形成されてきたものであるため、すぐに修正するのは難しいのです。

それでも、確かな方法で少しずつ自分の内面と向き合い、健全で成熟した生活を手に入れたい方にとって、検討してみる価値のある有益な治療法であることは間違いないでしょう。

 

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