adhdは天才のクセ

注意欠陥多動性障害(adhd)は、別名「天才病」と呼ばれることがあります。
これまで「天才」といわれた多くの人々の一風変わったエピソードが、実はadhdの特徴と類似していることが近年わかってきました。

adhdはいわゆる発達障害の一種とされており、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(すぐに行動してしまう)などの心理学的特徴をもっている場合に、adhdとして分類されます。その特徴はときに日常生活を送るうえでの障害となってしまい、社会的な人間関係の構築を困難にするおそれを有しています。
adhdはもともと子供を対象としたとらえ方でしたが、近年では成人した大人にもあてはまる性質であることがわかってきました。
つまり、幼少年期の一過性の障害としてとらえるのではなく、場合によっては成人して以後もつき合っていく必要があるものだということです。

社会的なコミュニケーションが苦手で、さらにディスレクシア(失読症)の障害などをもつ場合には、例えばコンビニのアルバイトなども難しく、結果的に就業の機会が著しく減ってしまうことにもなりかねません。

しかし、一般社会に適応できないということは、裏返して考えると「型にはまらない新しい発想を必要とする分野」、つまりクリエイティビティが求められる世界では、adhdの人材が活躍する可能性があるということです。

例えばレオナルド・ダ・ヴィンチがadhdだったかもしれないという説や、野口英世にadhdの特徴がみられるなど、創造的な発見や著名な芸術を世にもたらした有名人たちが、実はadhdだった可能性について言及する論文が多数存在します。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、前払い金を受け取ったにもかかわらず仕事を完成させなかったり、依頼主のミラノ公に仕上がりの遅さを問い詰められても言い訳で乗り切ったりしています。また野口英世は、友人からの借金で非常識なほどの豪遊をする一方で、倒れるまで仕事を続けて「24時間仕事男」と呼ばれました。いずれも、adhd的な特性が垣間見える例といえるでしょう。

苦手なものごとには全く関心を示さず、だれもができることができない反面、興味のあることに対しては常人以上に熱心に取り組む能力をもっています。その適性を見極めて、創造的な仕事を見つけることができるかどうかが重要です。adhdの性質・興味のゆくえと仕事の方向性とを一致させることができれば、今までだれにもできなかったことを成し遂げるのも可能だといえます。

 

ただし、adhdの人材がそれぞれ適正のある職業に就くことができるかどうか、adhdのもち得る「天才性」を発揮できるかどうかは、彼らをサポートする人々など、とりまく環境が重要な要素となるでしょう。子供のころから障害があるのならばなおさら、両親の献身的なサポートこそが彼らの才能を伸ばし、「天才」として世にはばたかせる大きな力・要因となるのでしょう。

 

さらに、adhdは単なる精神的な障害ではなく、広い意味で「脳の思考のクセ」でもあるという側面を忘れてはいけません。

例えば「集中できない」「お金にだらしがない」などのエピソードをもつ人を、それだけで「adhd」であると断定はできません。同様に、adhdの特徴をもつから天才に違いないと盲目的に思い込むのは危険です。なぜなら周りの環境こそが、adhdの特性や思考のクセを上手に引き出すための鍵となるからです。

 

どのような人間にも、向き不向きがあります。adhdといわれる性質をもつ人々には、その向き不向きがとくに顕著に表れます。
これまでの天才たちは、adhdの特性をうまく活かし、それと上手につき合うことで大成功を収めてきました。
adhdの障害がもつ特性は、ときにだれも考えの及ばぬ創造のいとぐちになるのかもしれません。