adhdによる片付けと言う決断の連続を克服する
発達障害の一つであるADHDの人は、整理整頓や片付けが苦手だといわれています。
物事を順序立てて考えたり、頭の中にあることを整理して考えたりするなど、
計画的に物事を進めるのが難しいからです。
片付けができないと自覚しているADHDの人も多くいます。
普段何気なくおこなっている片付けは、実際は脳をフル稼働して遂行しています。これはどこにしまうのか、必要なものなのか、それら一つひとつはとても単純なことでしょう。しかし脳の中では、その判断や決断の連続行為が必要です。
それでなくとも苦手な脳内整理を求められるのですから、
いくら片付けたいと思っても、脳内では大混乱を起こしてしまいます。
たとえば、何か物を出して机の上が散らかったとします。
他の人にすれば、どうして終わったら片付けないのだろうか、と思います。
しかし本人は、他の情報や目の前の事物によって、すっかり気持ちが移ってしまっています。直前までおこなっていたことが、脳内から消えてしまうのです。ですから当然、片付けるという行為は完全に消え去ってしまい、片付けない、散らかしっぱなしの状態となるわけです。むしろ「片付けない」のではなく、「片付けるという状況ではなくなっている」のです。自分の後ろを振り返ればそれくらいわかるだろう、と思うかもしれません。しかし、目の前の事物に振り回されてしまい、優先順位を考えて行動するのが難しいのです。
これが自分の部屋ならまだしも、学校や職場となると問題です。
周りからは迷惑がられ、非難の対象ともなり、ADHDの人にとって非常に不利な状況となります。目に入った事物が意識を独占してしまうので、次から次へと意識が移ってしまい、頭の中の整理ができなくなってしまうのです。
これが、多動衝動といわれるADHDの大きな特徴といえます。
「片付けられない」というと、ゴミ屋敷を連想するかもしれませんが、ADHDの片付けられない状態はそれと同じではありません。
調査や研究によると、ゴミ屋敷と騒がれる極端な例は、なんらかの経験やネガティブなイメージへの対処法として、物を捨てたくなかったり、ため込んでしまったりする場合がほとんどだそうです。
片付かない状況に至る理由が、ADHDのそれとはまったく違うことがわかります。
そのような誤解も、非常に怖いことであると感じます。
ADHDの自覚があるかどうかは、とても大切な部分です。
たとえば、医師にADHDと診断されていて、かつ自覚しながらの日常生活であれば
少なくとも対処を考えるようになるはずです。
主婦の場合なら、子どもへの影響もあるでしょう。
社会人なら、自分の立場や役割を守る必要もあるでしょう。
もしADHDの自覚がまったくなければ、対処も遅れてしまいます。子どもは親の影響を受けてしまうでしょうし、社会では単にだらしない人と受け止められ、自分の評価を落とすことになります。人間関係にも影響するかもしれません。
そういったことを繰り返すうちに、人に怒られることによって落ち込んだり、自信をなくしてしまったりという悪循環も生じてきます。
自分は一つの物事に集中できない、後片付けや整理整頓ができない、という人は案外多いものです。そのことをしっかりと認めて対処している人が、ネットで検索するだけでもたくさんいることがわかります。
判明していないだけで、決して珍しい障害ではなく、現代では実に多くの人がADHDであるのではないか、との意見もあるほどです。
たかが片付け、と見過ごすことはできません。
自信をなくしてしまうということが、悪循環を生む根源になってしまわないように、周りの理解を得ることができたら、もっと生きやすくなるはずです。
ADHDの片付けができない理由として
・戻そうとは思っていたのに忘れてしまう。
・そもそも使っていたこと自体を忘れてしまう。
・捨てるかどうかを決められなくなってしまう。
・片付けたいと思っても、どうしたら良いか決められないので後回しにする
などがあげられます。
ある意味、本人の意思とは違うことが起こるのです。
おそらく、ふと気づいてから「しまった・・」と思うことも多々あるでしょう。
目に飛び込んできた次の情報によって、片付けようとしていたのを
忘れてしまう。新しい情報に頭が独占されてしまうので、何をしようとしていたかを思い出すこともなく、片付けに至らない。
片付けや整理整頓をしていても、それをしまうべきか、捨てるべきかの
判断ができずどうしようもなくなり、後回しにしてしまう。
ADHDの人でなくとも、思い当たる場面があると思います。
このような理由から、ADHDの人は脳の構造として片付けが苦手とされるのです。
しかし、片付けや整理整頓ができない、苦手だと自覚することにより、それを少しでもやりやすく、わかりやすくカバーしながら克服しようと工夫している人がたくさんいます。
やることをリスト化して目に見えるようにするとか、ここだけはいつも片付けると決めるポイントを作るとか、それぞれにアイデアを駆使して対応しているようです。
無理のある計画では、同じことの繰り返しになります。後でやろう、今度にしようと思ってしまっては、結局いつになるかわからないからです。
自分の状態をよく理解して、できることから始めるのが重要です。
もちろん、家族がいるなら協力してもらうのが望ましいです。家族に声掛けをしてもらうことができれば、一つずつ地道に片付けていくのも可能になるでしょう。苦手意識を自覚しながら少しずつ対処していくことによって、克服できることも増えてくると思うのです。
まずはすべてを完璧にしようと思わないことが大切です。
机の上だけはきれいに片付けようと決める、捨てていいかどうか迷った時は、とりあえずきれいに重ねておくなど、自分のルールを作るしかありません。
ADHDは外見からわかるものではありません。
本人すら自覚していない場合も多いものです。
自分は少し忘れ物が多いとか、片付けが苦手だとか、その程度にしか考えないのだと思います。
それが、なぜかよくそれによって問題を起こしてしまうなど、失敗を繰り返す自分がつらくなった時、初めて自分の内面を考えたり、心療内科を受診してみたりします。
そうすることによって、自分がADHDであるという事実を知るのです。
大人になって初めて気づくことも多いようです。
職場のデスクが山積みになっていてだらしない、とみんなに思われ、ついに
人間関係まで悪くなってしまう。時にはいじめにあうことなどもあるようです。
結局退職することになってしまい、そこで初めて「自分はおかしいのではないか」と診察を受けてみたら
ADHDと診断された。しかし理由がはっきりとわかったことで、今後どのように対処していくかを前向きに考えられるようになり
安心した、という例もあります。
自分なりに、考え方を変える努力は大切です。
脳における障害の1症状であるADHD、その片付けられないという部分、
そことの向き合い方は重要です。少しずつ克服して、今では片付け上手になっているという人もたくさんいます。
きっと、とてもしんどい努力になるのでしょう。片付けが苦手で、嫌いな人はどこにでもいくらでもいますが、そこをどうにかしようとはあまり思わないでしょうから。
しかし、上手に自分と向き合っていく努力や、ありのままの自分を意識することは、克服への第一歩であることに違いありません。
もちろん、周りの理解もあるに越したことはありません。
自分がADHDであるとはなかなか言えないかもしれませんが
身近な信頼できる人に伝えて理解してもらえたなら、とても心強いでしょう。
だれでも、いつでも、家じゅう完璧にきれいにしているわけではないし、
部屋の中が散らかっているのもしばしばということは、そう珍しくはないでしょう。
たまたまADHDというくくりがあるだけで、
片付け上手になる考え方や方法は、ADHDでない人とまったく同じといえます。
脳の働き方に特徴があるだけで、おかしいわけでも悪いわけでもありません。
ですから身近にADHDの人、ADHDかもしれないと思う人がいるならば、これらを理解して接することが必要でしょう。