強迫性障害と行動療法カウンセリング

「強迫」とは、ある観念や衝動が自分の意に反して執拗に意識にのぼり、ばかばかしいと思いながらも、そうした観念と衝動、それを中和するための行為を止めることができないという一連の現象を指す概念です。私たちはよく「~が気になって仕方ない」とか「~をしないと気がすまない」という言い回しをします。強迫性障害とは、まさにこうした思考と行為が、自らの生活に支障をきたすほど繰り返されてしまうことなのです。

 

強迫性障害にはいくつかのテーマがあることが知られています。ここでは代表的なものを紹介します。

そのひとつは、不潔・汚染の観念とこれを打ち消すための洗浄・回避行為です。埃や虫、尿や便など日常避け難い汚れに対し、それを意識から消し去るために長時間繰り返し手を洗い、皮膚がひどく荒れてしまうといった例がこれにあたります。

次に、安全・確実をめぐる疑いと確認行為です。ガスを消し忘れたかもしれない、鍵を閉め忘れたかもしれないという不安が湧き上がっては確認行動を繰り返す、といった例がこれです。

さらに、対称性や正確さに対する欲求です。物品が左右対称に置かれているか、決まった手順どおりに食事や身辺整理ができているかなどが、これにあたります。

そして、性的・攻撃的言動についての反復的思考です。卑猥なことや暴力的なことが頭に浮かぶと、人前で言ってしまうのではないかという心配と不安でいっぱいになる、という状態が繰り返されます。さらにこの場合、言ってはいけない言葉の発出を防ぐために特定の言葉を思い浮かべるなど、心の中での作業が行われることもあります。

以上いずれの強迫行為も、厳密な規則にしたがって際限なく反復されるのが特徴です。

 

かつては、強迫性障害は比較的稀な難治の疾患と考えられてきました。しかし今日では、多くの症例が見られるとともに、治療にもよく反応することが知られるようになっています。また、この障害は青年期に発症することが多く、発症率に男女差はないものの、発症年齢は男性の方が低いということもわかってきました。

 

治療法については、その人の状態をよく見ていく必要があります。強迫性障害の行動療法には暴露反応妨害法というものがありますが、すべての患者に適応されるわけでもありません。症状が一人ひとり異なることから、一概に「この治療法が適切です」とは言えないのです。

もし、強迫性障害を疑うような症状がある場合は、医療機関を受診の上主治医とよく相談することをお勧めします。