adhdの症状や診断基準

・ADHDとは
ADHDは、注意欠如・多動症といわれる疾患です。年齢や発達とは不相応に、注意力の欠落、落ち着きがなくなる、衝動性が強くなるなどの症状が現れます。
これらの症状による問題が、学校生活や仕事に悪影響を及ぼし、その状態が6ヶ月以上続くものを指します。

・症状
ADHDの代表的な症状は、「不注意」です。課題や遊びなどの活動中に、注意力を維持することができません。
本人に直接話しかけたとしても、まるで聞いていないように見えることがあります。
職場などでは、指示に従うことができない、業務を遂行できない、といった症状もあります。
また、論理的思考ができないため、自分自身でスケジュールを立てることも困難です。
日々の生活では忘れ物やものわすれが多くなり、物を紛失することも増えます。

「多動性・衝動性が高まる」のも代表的な症状です。
行動に落ち着きがなくなり、手足をソワソワ動かしたり、授業中に席を無断で離れたりすることもあります。
人によっては、まくし立てるようにしゃべることもあります。順番を待つことができなかったり、他人の邪魔をしたりすることが多いのも症状の一つです。

・原因
ADHDの原因については、残念ながらまだ解明されていません。
ただし、脳機能の成熟や発達に偏りが生じたことに起因する、ということだけは判明しています。
しかし、なぜ偏りが生じるのかがわかっていないのです。
これまでの症例データから推測されるのは、遺伝的な素因や周産期の問題、環境要因などが複雑に絡み合って発症するのではないかということです。
ADHDは特に子どもに多く、日本の子どもの5%が発症しています。また、女子よりも男子の方が3~5倍患者が多いことも特徴です。
ADHDの子どもへの対応が不適切な場合、患者が反抗的な態度や攻撃的な行動などの問題行動をとることがあります。それが引き金となって学習が遅延したり、精神的ストレスから精神状態に異常をきたしたりすることもあるため、早急に適切な対応をすることが大切です。

・診断
専門医による問診と簡単な質問シートへの回答で、まずは行動評価が行われます。
ADHDの診断では、本人の意見だけをヒアリングすることはありません。たとえば子どもの場合、保護者の意見をヒアリングするなど、患者の身近な人からも情報収集しながら診断を進めるのが特徴です。

その他脳の状態を調べるために、CTスキャン、脳波検査、知能検査、心理検査などを実施します。他にも、血液検査なども行われます。必要に応じてMRIスキャン検査を行うこともあります。

診断確定においては、問診が最も重要です。問診では、「出生時の状況」「自分の性格について」「生育歴・学童期のいじめや不登校の有無」「職場での人間関係」「既往歴や服用中の薬」「現在の自分の状態」などについて質問されます。

診断の確定目安には、アメリカの精神医学会が作成した「精神疾患の分類と診断の手引き」が用いられています。この手引書は何度か改訂され、現在は5版が使用されています。

・治療
ADHDの治療は、「心理社会的治療」と「薬物療法」が併用されます。

「心理社会的治療」では、患者と関わる保護者や教師などが、患者の行動に理解を示して対応するという手法がとられます。
そのために、環境調整や、保護者が患者に接する方法を学ぶ「ペアレントトレーニング」を実施します。

「薬物療法」では、2020年8月時点において、3種類の抗ADHD薬が存在します。
症状の特徴やライフスタイルに合わせて、医師が適切な薬物を選択する治療スタイルがとられています。
また、患者の症状に合わせて、抗うつ薬や気分安定剤などが併用されることもあります。