不安障害の事例

不安に思うことや怖いと思うことがあるのは当たり前ですが、不安や恐怖感が強すぎたり、それが常に頭から離れることがなかったりする状態だと、日常生活にも支障をきたしてしまいます。このような心の病気を、不安障害と呼んでいます。

不安障害は、パニック症(パニック障害)、社交不安症、全般不安症に大別されます。

 

★<パニック症(パニック障害)>

不安が高まると、突然息苦しくなったり、激しい動悸(心臓がドキドキすること)やめまいに襲われたりといった症状が現れます。急激に始まるこのようなパニックを「パニック発作」と呼びます。

発作自体は短時間で治まりますし、命に関わることもありません。しかし、「またこのような発作が起きたらどうしよう」という不安や恐怖心が、常につきまといます。

心臓がドキドキするから心臓病ではないかと心電図を撮ったり、CTで調べてみたりしますが、身体には全く異常が見当たらないのもパニック症の特徴です。「異常がないから様子を見ましょう」と言われても納得できないばかりか、医者が誤診しているのではないかと不安になり、さまざまな病院をはしごする人もいます。

中には、電車の中や人ゴミに出た際にこのような症状が現れるケースもあります。発作を起こしたくないからと外出を控えたり、電車には乗らず長距離を自転車で移動したりする人もいます。このようになると、社会生活にも影響を及ぼし始め、当人にとって大きな問題となります。

発作は、強いストレスがある時およびアルコールやコーヒーなどのカフェイン飲料を飲んだ際、特に起こりやすい傾向があるようです。

パニック症の一例を紹介しましょう。※この事例は、専門書をもとに作り上げたフィクションです。

大学二年生のAさん。いつものように電車に乗って学校に通っていると、鼓動が激しくなり「このまま自分は死んでしまうのではないか」という強い想いが頭から離れなくなります。鼓動は強く打ち続けAさんの「死んでしまう」という想いはより強くなり、過呼吸を発症して倒れてしまいました。

次の駅に着いたとき救急車で近くの病院に運ばれましたが、検査をしても異常なし。しかし、Aさんは「またあのようなドキドキが起ったらどうしよう」と思い、徐々に家から出るのが困難になっていきました。

 

★<社会不安症>

人前に出るのが苦手だという人は少なくありません。みんなの前で発表しなければならない時、顔が真っ赤になり声が上ずる経験をした人も多いことでしょう。小学校から大学までの同級生の様子を思い返してみても、そのような仲間が1人や2人はいたのではないでしょうか。

それでも発表できるのはまだよいほうで、激しい動悸がしたり下痢になったり手足が震えたりして、人前に立つことすら満足にできないという人もいます。

また、それほど親しくはない人と会話や食事を共にするのが苦手で、忘年会や新入社員歓迎会などは逃げ出したくなるという人もいます。たとえ出席したとしても会話することもなく、うつむいて黙って食べているだけになってしまうのが苦痛だからです。

 

★<全般不安症>

不安をいだくのには、たいてい相応の理由があるものです。しかし全般性不安障害は、理由のない漠然とした不安を長期間感じ続けるのが特徴です。常に漠然とした不安があるので、特定の事象に関しても必要以上に考えすぎてしまいます。

この病の鑑別は非常に難しく、医師でないと困難です。もしこのような症状を自覚しているようであれば、医師に相談するのがよいでしょう。

 

★<特に治療をしていない人が多いが、日常生活には支障をきたしている>

心の病は、受診するまでに時間のかかるケースが少なくありません。まだまだ日本では、心の病に対して偏見があるようです。

不安障害も、病識をもつより「私はこういう人だから」で済ませているケースが多いものです。しかし不安障害は性格の問題ではなく、対処の必要な病気です。是非、早めに心療内科や神経科、メンタルクリニックなどを受診することをお勧めします。